消費者庁 〈「つけ込み型」契約の取消権を議論〉/2年以内の法案提出を目指す

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む

 消費者庁が、消費者契約法の改正に向けた議論を再開させた。2月13日、大学教授らを委員に据えた「消費者契約法改正に向けた専門技術的側面の研究会」の第1回会合を開催。合理的な判断ができない事情を不当に利用して事業者が消費者を勧誘し契約させる「つけ込み型」の取消権や悪質な契約によって生じた損害額の議論など4項目について検討するとしている。研究会は非公開で進め、毎月1回のペースで計8回開催していく予定。消費者団体や事業者団体、事業者などからのヒアリングを経て今夏をめどに中間報告を公表する見込みだ。

■高齢者と若者の判断力不足など焦点
 議論の中心になりそうなのが、人口増加が進む高齢者と、成年年齢の引き下げに伴い、契約解除が課題となっている若年層による契約だ。双方とも、「社会的な経験が乏しい」「知識や経験、判断力不足に陥りやすい」とされているからだ。
 2月13日に開催した第1回目の研究会で配布された資料には、消費生活相談の概況を紹介。スマホの普及により、ネット関連の相談が高齢者にも広がっている点を踏まえ「高齢者の消費者被害は依然として深刻」と指摘。さらに「認知症などの高齢者が契約当事者になる場合は本人からの相談が少なく、トラブルに巻き込まれていながら相談に至らない高齢者もいる」と説明する。
 消費者庁が議論を始めた消費者契約法は、内閣府消費者委員会による17年8月の答申や、18年改正法案可決時に付された衆議院・参議院消費者問題に関する特別委員会の附帯決議において、検討を深めるべき論点が提言されている。さらに、近年、オンライン取引(ネット通販など)を中心に消費者取引の形態が多様化していることを踏まえた法改正の可能性の必要性を説いている。
 特に18年6月12日の参院法務委員会の「民法の一部を改正する法律案に対する付帯決議」の中で、「知識・経験・判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して、事業者が消費者を勧誘し契約を締結させた場合における消費者の取消権(いわゆる『つけ込み型』不当勧誘取消権)を創設すること」と明記。2年以内の法案提出を目指す。

■「つけ込み型」の定義が論点か
 消費者庁が研究会で検討課題に挙げる「つけ込み型」を新たな規制の対象としているが、具体的にどのような勧誘行為を指すのか。これまでも「合理的判断ができない事情の不当な利用に関する取消権」については、過去に消費者契約法専門調査会において検討が行われてきた。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ