大手ECモールがポイント還元策を強化し、顧客の囲い込み戦略に拍車を掛けている。アマゾンは初売りセールでポイント還元率を高めるキャンペーンを実施。ヤフーは今春、ポイントサービスを「期間固定Tポイント」から「PayPay(ペイペイ)ボーナス」に移行する。スマホ決済とひも付いたポイント特典を付与することで、さらなる利用促進を図る。楽天が10月に開始する携帯キャリアと連携したポイント還元策にも注目が集まる。ポイント還元合戦はさらに過熱し、新たな競争時代に突入しそうだ。
■過去最大のキャンペーン
ポイント還元策は過熱の一途をたどっている。
ヤフーは「5のつく日キャンペーン」でポイント付与率を最大5倍に拡大したり、ソフトバンクの携帯電話ユーザーにいつでもポイントが10倍になるサービスを提供している。
さらに18年の「いい買物の日」キャンペーンでは、ソフトバンクユーザーなら全商品をポイント16倍に、100以上の対象ストアでは25倍のポイントアップ施策を実施した。
楽天もヤフーなどのポイント強化策に対応すべく、複数サービス利用でポイント還元率を高める「スーパーポイントアッププログラム(SPU)」を強化している。18年中に対象サービスを増加し、8倍から15倍と還元率を2倍近く増加させている。
リクルートライフスタイル(本社東京都、淺野健社長)は1月10~13日、ECモール「ポンパレモール」において購入金額の23%以上をポイント還元する大型キャンペーンを実施した。リクルートカードを利用するなどの条件を満たすと、ポイント還元率は最大41.2%になる。還元率は過去最大級だという。
■最大60%還元も可能か
楽天やヤフーがポイント還元策を強化する中、アマゾンも新たな動きを見せている。
1月2~4日に実施した初売りセールでは、アマゾンが負担する最大7.5%分のポイント還元に加えて、出品者負担で最大50%のポイント還元を追加できる取り組みを実施した。ポイントの還元率が高いほど露出が増えるという。
アマゾン出品サービスに特化したコンサルティング事業を展開するアグザルファの比良益章社長は、アマゾンでもポイントによるお得感を打ち出した販促が今後はより重要になると見ている。
「アマゾン負担のポイント還元率は最大10%程度だったので、他モールよりもお得感が少なかった。今後、出品者負担でポイント還元率を含めた展開になれば話は変わる。楽天がお買い物マラソンなどで『ポイント最大43倍』と言っている中、アマゾンでは出品者負担で最大50%を追加できる。法的な問題はクリアする必要があるにしても、『ポイント最大60%還元』とうたえるといえる」(アグザルファ・比良社長)と話す。
アマゾンでもポイント訴求ができるようになることで、出品者によるポイント還元競争が激化するかもしれない。
「出品者負担でポイント還元率を上げれば露出は増えるが、利益率は低下する。アマゾン出品者はポイント還元などの値引きだけではなく、アマゾンの仕組みを理解した上で利益率を下げない取り組みが重要になるだろう」(同)と指摘する。
■ペイペイ移行で活性化
19年は各社のポイント還元競争において大きな節目となりそうなイベントが控えている。
(続きは、「日本流通産業新聞」2019年1月17日号で)
〈過熱するECモールのポイント競争〉 アマゾンが還元強化/ヤフーの「ペイペイ」移行も注目
記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。