東京都 若者の消費者トラブルに注意喚起/NBに関する相談が増加

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 消費者庁や東京都が若者の消費者トラブルに注意喚起している。東京都の17年度上半期(17年4—9月)の相談によると、若者に関するものは6879件であり、前年同期(6967件)と比べ1.3%減、相談全体に占める割合は12%前後で推移。件数は微減になっているものの、”お試し”を切り口にした化粧品や健康食品など定期購入のトラブルのほか、インターネットやSNSを使って、就職活動やスキルアップセミナーに勧誘するマルチ商法(連鎖販売取引)に関する相談が増加傾向にあるという。消費者庁は2月20日に、若者をターゲットにした悪質な勧誘に注意するよう消費者喚起情報を配信し、トラブル防止を呼び掛けている。

 消費生活相談では近年、高齢者の消費者トラブルに加え、契約に対する知識や経験が乏しい若者を巡る相談も目立っている。ネットやSNSなどを使い、サービスを利用する過程で思わぬトラブルに遭うケースが多い。ネットで簡単に契約でき、クレジット払いなど支払能力を超える契約が安易にできてしまうため、若者にはその契約を冷静に判断できないことが大きな原因となっている。
 東京都に17年度上半期に寄せられた若者の相談件数をみると、「店舗購入」の37.7%に次いで、「通信販売」が36.1%と多かった。「マルチ・マルチまがい」の相談については、若者の相談全体(全世代)が1.5%なのに対して、6.2%となっている。
 契約当事者が「給与生活者」の相談は58.1%で最も多く、次いで「学生」が29.5%。「学生」に分類された相談のうち、「大学生などその他の学生」が20.4%と最も多く、「高校生」が3.1%、「中学生」が2.2%と続く。
 定期購入のトラブルについては、スマホで契約するケースが多く、契約に関する条件などを確認しないまま契約したり、相談のあっせんをするための画面がないケースもあるという。都には、「定期購入と気が付かず、ダイエット茶を申し込んだ。2回目がこれから届くという高額請求のメールが届いた」といった相談が寄せられるという。「契約時の画面がスマホになく、あっせんするための材料が少ないこともある」(東京都・浅倉美文相談課長)と話す。
 就職活動やスキルアップに結び付けて、セミナーなどの連鎖販売に関わったというトラブルも増えている。こうした「マルチ・マルチまがい」の相談についても、若者の割合が大きい。最近では、従来の電話や対面による契約ではなく、メッセージアプリなどで誘い出し、トラブルになるケースが出てきている。
 消費者庁は2月20日、若者をターゲットにスマホを使って違法にビジネススクールの連鎖販売取引を行っていたとして、iXS(本社東京都)を6カ月間の業務の一部停止を命じた。同社は「とりあえず話を聞きに来てくれればいいから」「紹介したいバイトがある」などといって勧誘。「儲かっている。めちゃいいよ」「月々2万1600円払っても黒字になる」などと告げ、契約していたという。
 同庁では、同日「『必ず儲かる』ことはありません」との注意喚起を行った。消費者庁は注意すべきポイントとして(1)友人からの誘いでもはっきり断る(2)「必ず儲かる」「楽して稼げる」ことはない(3)「親などに内緒に」といった契約に注意(4)友人を紹介すると関係が壊れる─などを盛り込んだ。
 こうした状況を踏まえ、東京都でも3月12・13日に特別相談として「若者のトラブル110番」を実施。動画やSNSを活用して、若者への注意喚起を強めている。
 世間の副業ブームもあり、若者がNBに会員登録するケースが目立つ。一方で、知識や経験が乏しい若者の契約に関して、年齢制限を規約に盛り込んだり、登録する際に年齢が分かる証明書の提示を求めることでトラブルの防止に努めている。東京都の浅倉相談課長は「適正に運営する企業は大きな迷惑が掛かっている」と話す。悪質事業者と行政とのいたちごっこは依然続いている。
 企業側は、高齢者対策と同様に、若者の契約についても社内体制を整備して、トラブルの未然防止につなげる必要がありそうだ。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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