ファッションECモールの市場環境が厳しさを増している。ベルーナは12月3日、ファッションECモール「RyuRyumall(リュリュモール)」を25年3月末でサービスを終了すると発表した。クルーズショップリストが運営するファッションECモール「SHOPLIST(ショップリスト)」は成長の限界を認め、グループの主力事業から外す決断をした。「リアル回帰」「暖冬」「格安ECの台頭」など厳しい環境の中での戦いが続く。最大手の「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」はコスメなどの商材拡大や、広告事業の強化で収益力の向上を図っている。「LOCONDO(ロコンド)」は「MAGASEEK(マガシーク)」を買収し、圧倒的2位の地位を確保しつつ、次の戦略に進もうとしている。
ベルーナは19年6月からサービスを提供してきたファッションECモール「RyuRyumall」を25年3月でサービスの提供を終了することにした。
注文の最終受付は25年3月31日午後6時までとしている。未消化のポイント・クーポンは有効期限にかかわらず失効となるため、利用者には早めの利用を促している
サービス終了の理由として近年の外部環境変化や「RyuRyumall」の利用状況などを総合的に判断したと説明する。
■コロナ後に成長鈍化
外部環境の変化は確実に既存のファッションECモールの市場環境を悪化させている。
コロナ禍には外出する人が減少した一方で、巣ごもり需要の拡大により、ECの利用促進につながった。ただ、その反面、コロナ禍が収束し、実店舗での購入が戻ってきた”リアル回帰”の局面においては、EC利用の減退が進んでいる。
ファッションECモール最大手の「ZOZOTOWN」もコロナが23年5月に「5類感染症」に移行するまで”コロナ禍”の商品取扱高は前期比9~11%増で推移していたが、アフターコロナに突入した24年3月期の増加率は同6・7%増と落ち着いている。
リアル店舗を中心に販売するアパレル大手はアフターコロナにおいて、実店舗とECサイトの会員情報や在庫情報などを連携し、ネットとリアルの相互利用を促すOMO施策をより一層、強化している。この場合のECチャネルは自社ECサイトになるため、アパレル大手のOMOの推進はECモールの取扱高低下にもつながっている。
近年の暖冬傾向により、秋冬シーズンにコートなどの重衣料が売れにくい状況もファッションEC業界全体の取扱高の伸びにはマイナスの影響を与えている。
■新たなプレイヤーが台頭
さらに、「SHEIN(シーイン)」や「Temu(テム)」といった中国発の格安ECが日本に相次いで参入している。価格優位性と大規模なプロモーション展開による低価格衣料品の販売におけるシェアを獲得しつつある点も影響が出ているようだ。
楽天グループが「Rakuten Fashion(楽天ファッション)」の展開を強化したり、ECモール「Qoo10(キューテン)」を展開するeBayJapan(イーベイジャパン)が22年4月にファッションECモール「MOVE(ムーブ)」の運営を開始したりするなど、大手ECモールのファッション分野へ進出強化も影響があるだろう。
■クルーズは事業転換
ファッションECモールで2番手の位置にいたクルーズは今年11月、中間期の決算説明会において、「SHOPLIST」をメイン事業から外す方針を発表した。これまでは「SHOPLIST」を中心に事業を多角化することで、グループで1兆円の売り上げを目指していた。しかし、メイン事業の「SHOPLIST」は21年3月期をピークに減収が続いていた。
同社は今後、「SHOPLIST」で事業成長を図る戦略を転換し、ITアウトソーシング事業をメインに据えるという。
■ZOZOは拡張路線
ファッションECモール各社は苦境に立ち向かうために、さまざまな戦略を掲げている。
(続きは、「日本流通産業新聞」12月5日号で)
【苦境のファッションECモール】 ベルーナは撤退発表/ZOZOは領域拡大、ロコンドは買収で成長狙う(2024年12月5日号)
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