近年、新規参入が相次ぎ、大きな盛り上がりを見せているのがペットフードEC市場だ。D2Cが全盛になってきているペットフードをD2Cで展開する企業の中には、犬猫生活やバイオフィリアなど、事業開始から数年で数十億円規模に成長する企業も出てきている。一方で、NB(ナショナルブランド)のペットフードを中心に展開してきた企業は、苦戦を強いられているようだ。ペットゴーの24年4―9月期(中間期)の売上高は、前年同期比で10%減。特にNB商品が大きく売り上げを落としたという。24年10月から、ペットフードの大手メーカーであるロイヤルカナンジャポンが、食事療法食の販路を、自社ECなどに限定すると発表。こうした動きは、NBを取り扱うEC企業の事業戦略に、大きな影響を与えそうだ。通常のフードだけでなく、療法食の世界にも、D2C時代が到来しているといえそうだ。
■D2Cは好調維持
D2Cでペットフードを展開する企業は、引き続き好調を維持している。
ペットフードなどのD2CECを展開する犬猫生活(本社東京都)の24年4月期の売上高は、前期比55.7%増の17億9000万円になった。24年6月には、商品パッケージをリニューアル。店頭に並べた際に目立つデザインを意識し、実店舗への卸を強化しているという。25年4月期は、通期での黒字化と、売上高25億円の達成を目指しているという。
フレッシュドッグフード「ココグルメ」をECで展開するバイオフィリア(本社東京都)の24年6月期の売上高は、非公開ながら本紙推定で25億円。これまで主力だったEC事業に注力するのはもちろん、今後は卸や海外販売も強化していく方針だという。商品カテゴリーの拡充も進めていくとしている。「EC事業以外の事業も合わせ、3年で売上高100億円の達成を目指す」(岩橋洸太社長)と話す。
フレッシュドッグフードのECを展開するPETOKOTO(ペトコト、本社東京都)は、売り上げこそ他社に遅れをとったものの、フレッシュフード市場での巻き返しを図っている。
24年4月には、常温タイプのウェットフードを発売。24年10月には、ECサイトと商品の大幅リニューアルを行った。
これまでの同社のサブスクでは、商品パッケージに、愛犬の名前をプリントするサービスを展開していた。今回のリニューアルに合わせ、商品パッケージを変更、名前のプリントサービスを廃止した。「愛犬の名前プリントは好評なサービスだった。ただ、注文から配送までのスピードの短縮や、臨機応変な対応、生産量の増加などが求められていることを考慮すると、今後維持していくのが難しくなるだろうと考えた」(大久保社長泰介社長)と話す。今後の売り上げ拡大を見据えた施策といえそうだ。
■療法食に大きな変化
ロイヤルカナンを販売するロイヤルカナンジャポン(本社東京都)は24年10月、自社の食事療法食について、ECでの販路を限定すると発表した。ECでは、ロイヤルカナンの公式オンラインストアと、認定オンラインストアのみでの販売となる。
認定オンラインストアには、サンドラッグオンラインストア、ビックカメラ.com、ヨドバシ.comなど、約10店舗のECが選ばれている。
この発表を受けペットゴーの黒澤弘社長は、「療法食市場において、ロイヤルカナンの商品は6~7割のシェアを持っていた。今後はそのブランドシェアが大きく変わる可能性がある」と話す。
販路の限定は、ECだけでなく、オフラインも同様のため、「当社のような同業者にとっては、療法食市場で新たな販路を獲得できる、大きな商機だ」(同)とも話す。
ペット用の療法食は、犬猫生活や、POCHI(ポチ)を展開するマーケティングパートナー(本社東京都)も、今後注力するポイントとして挙げていた。ペットのECモールでのブランドシェア争いが、今後加速していきそうだ。
■冷凍の療法食も
冷凍フレッシュペットフードの分野でも、療法食に注目が集まっている。
(続きは、「日本流通産業新聞」11月21日号で)
【ペットフードEC市場】 D2C時代が到来/数年で売上数十億円の企業も(2024年11月21日号)
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