【百貨店・ギフトのおせち商戦】 「ECシェア拡大」「早期化」続く/新たな競合は”ふるさと納税”か?(2024年9月12日号)

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大丸松坂屋百貨店の能登食材を使用したおせち〈一本杉 川嶋〉監修 和風おせち 二段

大丸松坂屋百貨店の能登食材を使用したおせち〈一本杉 川嶋〉監修 和風おせち 二段

 おせち商戦が始まった。百貨店のおせち商戦は、主戦場をECにシフトさせていっている。23年度のおせち商戦の売り上げを見ると、大丸松坂屋百貨店のEC比率は初めて50%を超えた。松屋は46%だった。松屋では今年度、EC比率6割を目指すという。受注の早期化も進んでいる。大丸松坂屋百貨店によると、市場がレッドオーシャン化する中で、ふるさと納税によるおせち購入が増加しているという。そのため、おせち関係者は、ふるさと納税のマーケットの動向も注視している。販路が広がる中、顧客層の開拓も進んでいるようだ。

■EC・電話注文が67%に

 大丸松坂屋百貨店(本社東京都)の23年度のおせち商戦は、全体の売り上げのうち、5割をECが占めた。
 同社のおせちECは、コロナ禍で大きく売り上げを伸ばしたという。19年度のおせち商戦の売り上げ構成比は、「EC(30%)」「電話注文など(21%)」「店頭(49%)」だった。
 23年度は、「EC(50%)」「電話注文など(17%)」「店頭(33%)」となり、初めてECシェアが全体の半分を超えたという。
 大丸松坂屋百貨店の25年新年のEC売り上げ目標は、前年比8%増としている。「ECは大きく成長してきたが、今年度もさらに伸びると見ている」(フーズおせち料理担当・柴田智氏)と語った。


■EC6割を見込む

 松屋(東京都)でもECが好調だ。23年度は、おせち商戦全体の売り上げのうちECシェアは46%だったという。EC売り上げは、前年比で6%増で着地したそうだ。
 同社の今年度のEC比率は、60%を目指すという。EC売り上げ目標は、前年比約30%増を見込むとしている。「さらにECの強化を図っていく」(銀座本店食品部食品一課バイヤー・係長の田中翔氏)としている。
 ECであれば、生活圏に店舗がない場合でも、全国配送が可能だ。利便性の高さから、今後の百貨店おせち商戦でも、ECのシェア・売り上げの拡大が続いていきそうだ。
 あべのハルカス近鉄本店のみではあるが、近鉄百貨店では、ECで注文した商品の、店頭での受け取りもできるという。場所の制約を超えて、フレキシブルにおせちを注文できる点が好評だ。


■市場がレッドオーシャン化

 大丸松坂屋百貨店の23年度のおせち商戦は、19年度比では23%増の成長となった。ただ、コロナ禍での売り上げの伸びが大きかったため、前年との比較では売り上げは前年並みだったという。
 同社では、「おせち市場のレッドオーシャン化」が課題だと感じているそうだ。特に、ふるさと納税によるおせち購入が増加しているというマーケットの動向には警戒しているという。昨年度からは同社も、店舗単位でふるさと納税市場に参戦しているそうだ。
 「ふるさと納税や、外部ECモールなど、新規販売チャネルの開拓に注力していく」(柴田氏)としている。
 おせち市場の競争が激化する中で、新たな販路の拡大が必要不可欠となってきているようだ。
 特に、百貨店の従来の顧客層と、高額のおせちをふるさと納税で購入できる高額納税者とは、ターゲット層が重なると考えられる。百貨店のおせち市場において、ふるさと納税のおせちの存在感は、今後も高まっていきそうだ。


■早期化のメリット大

 各社年々おせち商戦の開始日が早まっている。

(続きは、「日本流通産業新聞 9月12日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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