ロレックスなどの高級腕時計を中心に、腕時計EC市場が盛り上がりを見せている。コロナ禍の急成長こそいったん落ち着いたものの、好調を維持している企業は多い。十万円台、百万円台のものも多い高価格帯の商品をECで売り切る企業は、「商品の見せ方」に工夫を凝らしているようだ。ザ・クロックハウスでは、「実物を実店舗で見てから、ECで購入する」動線を強化している。バイセルテクノロジーズでは、定期的な動画配信を行い、リアルに近い感覚で商品を確認できる環境を整えている。高級腕時計のマーケットプレイス「Chrono24(クロノ24)」では、偽物を出品された際の対策として、「AIによる確認」も導入。顧客からの信頼につなげているようだ。
■各社〝見せ方〟を工夫
着物やブランド品などの中古品をECで販売するバイセルテクノロジーズ(本社東京都)では、動画を活用した商品紹介を行っている。EC売上高は非公開ながら、22年12月期は腕時計の売り上げが前期比で5倍になっており、23年12月期も増収が続いているという。
同社では定期的に、ユーチューブに商品紹介動画を投稿しており、ユーチューブのリンクから自社ECサイトに流入するユーザーが多いのだという。「ユーチューブでは、腕時計やバッグ、ジュエリーなどを、さまざまな角度から撮影し、投稿するようにしている。販売価格が30万円以上のものの中から厳選して投稿している」(販売戦略本部・EC事業部の志賀亮佑サブマネージャー)と話す。
撮影から公開までにかかる時間は、約1時間。以前は、撮影するごとに動画をアップしていたが、23年からは、「毎日午後5時に公開」というルールを設けたという。「決まった時間に公開するようになって、以前より再生数が伸びた」(同)としている。
同社では、商品ページの写真も、商品の価格帯などによって扱いを変えているという。「基本的には各ジャンルの担当者がアイフォンを使って商品写真を撮影している。ただ、例えば腕時計ならば、50万円以上の商品は、外部のプロカメラマンに依頼するようにしている」(同)と話す。
「高額品は、商品ページの写真も増やすようにしている。箱や付属品の写真も併せて載せている。高単価の時計は、簡単には買ってもらえない。だからこそ、ネット上に、できる限りの情報を上げることを意識している」(同)と話す。
ザ・クロックハウス(本社東京都)も、商品ページの作り込みには、注力しているという。
「普通の商品は、メーカーから届いた既存の写真だけで掲載しているが、高単価のものは、商品ページを作り込むことが多い。メーカーに新しいカットを希望して載せたり、着用写真を増やしたりしている」(大田弘之専務)と話す。
■国産も高単価寄りに
国産メーカーの腕時計を多く取り扱うザ・クロックハウスによると、近年、国産メーカーの商品の売れ行きにも変化が見られるという。「腕時計を買う消費者が減ってきたこともあり、低価格帯の商品の売れ行きは年々下がってきている。そこでメーカー側も、『復刻』『限定』『コラボ』など、コンセプトを持った商品を増やしているようだ」(同)と話す。
(続きは、「日本流通産業新聞」9月21日号で)
【腕時計EC市場】 高級品の好調は継続/各社〝見せ方〟を工夫(2023年9月21日号)
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