家電通販では今年、2万~10万円前後の中価格帯商品の売れ行きが好調だ。14年4月の消費増税以降、10万円を超える商品の注文は伸び悩んでいたが、今年春から注文数は回復の兆しを見せている企業が増えている。キッチン家電や生活家電などの白物家電、健康や美容家電といった商品ジャンルが売り上げを支えている。各社はこの傾向が来年以降も続くと予測している。
10万円以下が人気に
家電の通販サイト「PCボンバー」を展開するアベルネット(本社東京都、小山励基社長)では今期、炊飯器や食洗器、冷蔵庫のほか、洗濯機などの売れ行きが好調だ。冷蔵庫は2ドアの中型タイプ、洗濯機は1人暮らし用で、3万~5万円の価格帯商品が売れ筋となっている。「大きさと料金の手頃さで、通販で購入するにはちょうどいい価格帯と捉えられている」(事業部)と言う。
パナソニック製の食洗器「NP―TR8」(実勢価格9万円)は主婦からの注文が多い。水回りの工事を必要とするタイプのため、取り付け工事の申し込みも合わせて受け付けるなど、顧客からの要望に応えている。
主力商品であるデジタル家電では、富士通やNECといった日本メーカーのパソコンは中高年からの一定数の注文はあるが、以前ほどの勢いはない。現在はタブレットの注文が中心になっている。
ムラウチドットコム(本社東京都、村内伸弘社長)では、女性向けの美容・健康家電の販売が堅調だ。パナソニック製のヘアドライヤー「ナノケア」(2万1800円)は、ハンドル部分にイオンを発生させるパネルを搭載した商品で、男性の購入も目立っている。
通販サイトを運営する、家電のSAKURA(本社大阪府、山口緑社長)は今夏から、比較的高額な商品の動きがいい。炊飯器はこれまで2万~3万円台の商品が主流だったが、グレードの高い商品も人気となっている。象印の炊飯ジャー「極め炊き」(税込7万5247円)は今年8月の発売以降、仕入れるとすぐに売り切れる状況が続いているという。
こうした商品は中国人の注文も多い。同社では海外発送を行っていないため、中国人のバイヤーが日本で購入して、中国本土に送っていると同社ではみている。
家電が中心の通販サイト「EC―JOY」を運営するアイ・アンド・ティー(本社東京都、高橋英太社長)では、15万円を超えるA4サイズのノートパソコンの注文が減少している一方、レノボや東芝などの基本機能が搭載されているシンプルで低価格なタイプの人気が高まっている。ソニーの「エクスペディア」シリーズなどのタブレット端末も売れている。これらは価格帯は5万円前後の商品が人気で、20~40代の男性による購入が中心となっている。
家電の通販会社デンマート(本社東京都、鈴木秀幸社長)では、消費増税以降、20万円以上の高価格帯商品の動きが依然として鈍いが、今春から5万円前後の白物家電の注文が増加している。
同社はエアコンや加湿器、ホットカーペットなどの季節商品を積極的に販売している。今年の秋からは、岩谷産業の「カセットガス暖房機」シリーズがヒットしている。
カセットコンロで使用されるガスボンベをセットするタイプの暖房機で、電気が不要な点や持ち運びできる使い勝手の良さが人気となっている。シリーズは3品目で、小売価格は1万7600~3万円だ。
「岩谷産業や東京ガスなどが独自の技術で開発した商品が、ヒット商品に成長するケースが増えてきた」(鈴木社長)と話す。
続きは「日本流通産業新聞」11月26日号で)
〈家電通販各社〉 中価格帯品の販売が好調/消費増税からの回復に兆し
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