消費者庁/「不正レビュー」に初のメスか/自社商品の五つ星や、他社の中傷など(2022年9月29日号)

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会合の様子

会合の様子

 消費者庁が、「不正レビュー」対策に乗り出す可能性が出てきた。事業者が、自社にとって都合の良い商品レビューなどを投稿したり、させたりするのが、いわゆる「不正レビュー問題」だ。ステルスマーケティング(ステマ)に対して景品表示法でどのように規制を掛けるかについて議論する「ステルスマーケティングに関する検討会」で消費者庁は、「不正な商品レビューに関する実態」についても報告。不正レビューも含める形で、ステマに対する規制強化の議論が進められる可能性が高まった。不正レビュー問題には、消費者のみならず、健全な通販・EC事業者も苦しめられてきた経緯がある。実効性のある規制となるのか、逆に過剰な規制にならないかなど、注目が集まっている。

■募集される不正レビュー

 9月16日開催の初会合では、消費者庁がインフルエンサーのステマ広告に関する実態調査について報告するとともに、不正な商品レビューに関する実態についても報告した。「レビュー」も規制の対象になる可能性が高まった。
 検討会事務局は、ステマに関する実態調査の結果も報告。ECサイトの不正レビューの募集が、SNS上や購入者へのダイレクトメールにおいて行われている事例があることを紹介した。
 同検討会においては、立命館大学経営学部の菊盛真衣准教授が、ステルスマーケティングの手法の一つとして、「多数の発信者に口コミ投稿してもらう」ことがあると報告した。
 具体的には、(1)一般人に報酬を支払って、商品の購入を推奨する内容の口コミ投稿を依頼し、それを口コミ内で明示しない(2)商品を購買していない人の口コミ・レビューの投稿を促す─といった方法があるという。
 さらに、「口コミは『認知度』『商品の人気度』の指標となり、投稿件数が消費者の購買行動や売り上げに影響を与えることが、多くの研究で報告されている」(同)とも指摘した。
 「不正レビュー」の特徴は、(1)口コミ投稿件数(2)口コミの星評価 (5段階評価)(3)口コミの内容(ネガティブ・ポジティブ)─などで分類できると話した。


■事業者の損害も

 こうした不正レビュー問題は、消費者の商品選択を誤らせる可能性がある。不正レビューの横行は、消費者の被害だけでなく、健全な通販・EC事業者を悩ませ続けてきた問題でもある。
 アマゾンに出品するある化粧品メーカーでは、未購入者からのレビューによって、不利益を被ったことがあるという。アマゾンのユーザー同士で質問・回答し合う「カスタマーQ&A」などでも、ネガティブなステマ行為が行われ、被害を受けたとしている。「CVRに大きく影響があった」そうだ。
 そういった事例では、アマゾン外での購入者から、「返金保証の規約がややこしい」など、商品の品質や効果に関係がなく、アマゾンサービス外の内容について低評価レビューが付くのだという。


■悪用される「役に立った」機能

 ある化粧品メーカーの社長によると、「中には、『買うだけ無駄』『詐欺』など、名誉毀損にあたるような内容もあった」と言う。「さらに、そうしたレビューには、他とは比べ物にならないほど、異常な件数の『役に立った』が付く。通常多くとも10~30件前後だが、ものによっては500件を超える『役に立った』が付いている」(同)としている。

(続きは、「日本流通産業新聞」9月29日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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