本紙がまとめた「通信販売化粧品売上高ランキング」調査によると、1位の資生堂が突出する形となった(海外を含む連結売上高)。このほか、スキンケアを主力とする通販化粧品の多くが堅調な成長となった。成長が目立ったのは、「ニューモ育毛剤」が爆発的にヒットしたファーマフーズで、前期売上高は前期比726.5%増と大幅増収だった。
21年版の調査に続いてランキングで1位となった資生堂は、各国のEC売り上げを多く含むとみられる。世界中でコロナの影響は続いているものの、欧米を中心に購買行動が回復基調となり、2桁成長につながったようだ。
資生堂は前期、グループ全体でデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速。前々期と比較して、ECの占有率が大きく増加したことが成長要因といえそうだ。売上高全体に占めるECの比率は、グローバルで34%(前期と比べて20ポイント超の増加)となっている。
DXとして、CRM、データプラットフォーム整備の継続強化、ライブストリーミング、オンラインカウンセリングの推進、仮想空間でのプロモーション導入に積極的に取り組んだ。特に売上高をけん引したのは海外事業で、中国では、11月の大規模ECセールイベント「独身の日(ダブルイレブン)」で、前年比1・4倍の売り上げを記録し大きく成長した。
■「ニューモ育毛剤」ヒットで大幅増収
ランキング中、増収率が最も高かったのはファーマフーズだった。「ニューモ育毛剤」のヒットで大幅増収となった。21年7月末時点の「ニューモ育毛剤」の定期顧客件数は、前年同時期比216.2%増の77万3844件となった。「ニューモ育毛剤」のCPOが想定よりも高いことを受け、広告投資額を期初の想定よりも大幅に増加させている。インフォマーシャルの比率は2~3割。新聞など紙媒体の広告出稿にも力を入れたという。
このほか、前期比41.5%増収となったプレミアアンチエイジングは、売上高の大半を占めるスキンケアブランド「DUO(デュオ)」の「デュオ ザ クレンジングバーム ブラックリペア」を中心に20代の新規顧客獲得が進んだ。足元では、今年4月からメンズ化粧品市場に参入している。
ファンケルグループのアテニアは、21年4月に発売した、「美白」と「シワ改善」がどちらもできるスキンケアライン「ドレススノー」でスキンケアの新規顧客を大きく増やした。基礎化粧品ユーザーは約10%増加したという。今期はスキンケアの顧客に対して、美容液のクロスセルを積極的に展開する計画だ。
■ファンケルは広告抑制で減収
2位のファンケルの前期売上高は427億5800万円。前期比3.2%減とマイナスだったのは、上期における広告費の抑制が要因となっている。9月から11月に新商品の発売が控えていたため、上期の広告費を抑えた。これにより、スキンケアの購入顧客数が一時的に落ち込んだ。ファンケルは事業構造上、基礎スキンケアを購入する人が他の商材も購入し、年間の購入金額が高い傾向にあるという。
新日本製薬は化粧品通販事業が順調で、前期比1.4%増と増収基調を維持した。広告宣伝費を計画より抑えたほか、フルフィルメントコストの削減や、入電件数の減少に伴うコールセンターコストの削減も寄与し、営業利益も前期比2.8%増となっている。
ロレアルグループの傘下で、スキンケア通販のタカミは、売上高は非公開としているが、22年3月時点の「定期便」会員数は、前期比1.5倍となった。
中小規模の事業者の成長も目に付く。入浴剤を主力とするヘルスビューティーは、化粧品通販の売上高が145.4%増となった。売り上げ規模は小さいながら、顕著な伸び率となった。
【化粧品通販 売上高ランキング 2022年版】 スキンケア主力企業は堅調/育毛剤で前期比3桁成長の企業も(2022年6月30日号)
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