消費者委員会は3月10日開催の本会議で、消費者基本計画工程表の改定について議論した。消費者庁は、「新しい生活様式」の関係で変更となった工程表の箇所について説明。工程表のKPI(重要業績評価指数)の見直しについても説明した。委員からは、「少額の電子商取引」に対する注意喚起を強化すべきとの声も上った。
20年度からの5カ年を計画期間とする第4期消費者基本計画は、コロナ禍における「新しい生活様式」の実践に伴い、21年6月の時点で、一部変更となったという。消費者を取り巻く環境が大きく変化したことを受け、「新しい生活様式」の実践に関する記述が追加されている。
消費者庁は、直近の消費者行政の課題として、(1)「コロナ関連の悪質商法対策」や「孤立する消費者への対応」などの緊急時対応(2)取引や消費生活相談など、国際化も含めたデジタル化への対応(3)SDGsへの対応─の3点を挙げた。
21年12月の消費者委員会本会議で意見が上がっていた「工程表のKPI(重要業績評価指数)の見直し」についても議論した。
具体的には(1)施策概要に記載された取り組みを内容に応じ区分した上で、それぞれに対応した複数かつ定量的な指標を設定する(2)会議や説明会の開催件数等の「アウトプット指標」ではなく、認知度や理解度等の「アウトカム指標」を設定し、具体的な目標を定める(3)比較・検証するために、できる限り同様の指標を定める─の3点を見直すとし、工程表にある174施策の内、59施策を見直したと説明した。
KPIの変更の例として、インターネット取引市場を示した。「市場規模が右肩上がりの状況では、ネット通販等におけるトラブル防止施策を進めても、関連する消費生活相談件数の減少を目標とすることは現実にそぐわない」との認識を示した。(消費者庁消費者政策課吉田恭子課長)。「取引件数は増えたが、デジタル化により相談しやすい環境になっている。相談件数の増減理由を慎重に分析する必要がある」(吉田課長)と説明した。
■タイムリーな問題にも言及
(公社)全国消費生活相談員協会(全相協、事務局東京都)の中部支部長である清水かほる委員は、消費者に対する注意喚起を強化する事項として、「少額の電子商取引」を挙げた。「成年年齢の引き下げや、高齢者のスマホ利用者の増加を踏まえると、今後相談の増加が予想される。少額であっても、回数を重ねれば当然高額になる。そういった事例も増えてきているので、周知してほしい」と話した。
経産省に対しては「前払いのシステムの規律を徹底してほしい」と要望した。「情報商材や、出会い系サイトなど、人の弱みに付け込む悪質業者が多い」とも話した。
消費者庁消費者政策課の吉田課長は、「対応はスピーディーに行っていく。それに付随する形で効果も出てくるはず。悪質事業者を処分することで、抑制されていくと考えると、少し時間はかかるかもしれないが、取り組みを進めていく」と回答した。
高知大学理事で委員長代理の受田浩之委員は、食品のトレーサビリティーについてコメントした。「昨今、水産物の産地偽装が話題となっている。産地偽装をなくすためには、トレーサビリティーを確立させる必要がある。現在、コメと肉は法律で定められているが、その先をどうするかが国民の関心かと思う」と話した。「偽装問題に関しては、現在調査が進められている。今後調査結果を踏まえて、必要な施策の検討が進んでいくと思う」(吉田課長)と回答した。
〈消費者委員会〉 消費者基本計画工程表で議論/「少額の電子商取引」を懸念 (2022年3月17日号)
記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。