【中国ECビジネス 進出支援会社の業務雑記 齋藤勉】連載36 いつもと異なった「双11」

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斎藤勉氏

斎藤勉氏

 恒例の中国「独身の日セール」について、いくつか例年とは異なったことをレポートしたいと思う。
 日本のニュースでは「独身の日」といわれることも多いこのスーパーセールは、中国では例年11月11日に行うセールなので、一般的に「双11」という名称で呼ばれている。
 今年の場合、この「双11」をアリババが商標登録し、事前に他社に対する使用を禁じたことが話題になった。


記録の裏に隠れた失敗店舗

 今年の特徴の一つは、モバイル購入比率の拡大。全体の売上高571億元(約1兆849億円、1元=19円)のうち、243億元がモバイルからの購入だった。モバイル売上高の比率は42・6%で、昨年の4・54倍となっている。また、昨年までの「双11」セールは、出店していれば「何でも売れる」という印象だったが、今年は昨年並みの増加率を安易に想定して過剰在庫になった店舗も多いと聞いている。
 全店舗ランキングの1位「小米」(スマートフォン)、3位「ハイアール」(デジタル家電)、5位「ユニクロ」など、華々しい売り上げを達成した店舗もあるが、総売上高571億元のニュースの裏に隠れて、例年とは違う消費者の成熟により、店舗や商品の選別が進んでいたように思う。


小売業全体によるアリババ対策

 小売業界全体でのアリババ対策も進んでいる。BtoCモール2番手の京東商城は11月1日から先行してセールを開始、12日まで計12日間連続のセールを実施した。アパレル・カテゴリー商品の販売増加や、ウィーチャット(微信)を含めたグループ全体での集客の結果、注文件数は昨年度の2・2倍、モバイルからの注文は昨年度の8倍にまで達している。モバイルでの成長率では、アリババを超えているといえる。
 そして、全国の百貨店やスーパーもアリババ対策に乗り出していたようだ。京東商城同様、10月31日から11月14日くらいに「双11」対策として、前倒しまたは長期間のセールを実施して価格もネット店舗並みに下げている事例があった。
 恒例化した「双11」は、アリババや中国EC業界のためだけのセールではなくて、もはや「季節行事」や「消費習慣」になっている。


〈筆者プロフィール〉
 齋藤勉(さいとう・つとむ)氏 株式会社アジアコープ代表取締役。03年より上海にて日系広告会社の代表として勤務、現地日本語フリーマガジン「コンシェルジュ上海」をはじめ、複数の中国関連媒体の立ち上げに携わる。09年に帰国。現在は上海と東京を半々の拠点に、日本企業の中国進出支援業務を推進中。
 問い合わせは01saito@aziacoop.com

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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