【EC売り方研究所】〈プリントEC企業の提携戦略〉/OEM提供で顧客接点拡大に成功

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顧客が選んだデザインをTシャツやスマホケースに印刷し、ネット販売する、オリジナル商品のEC事業者が、新しい取り組みを始めている。自社のサービスのOEM(他社ブランドでサービスを提供すること)展開を開始し、顧客との接点拡大に成功しているのだ。スマホケースなどのプリント販売事業を展開するベーシック(本社東京都、秋山勝社長)は、テレビ局や大手アパレルブランドなどと提携することにより、OEMによる販売数を伸ばしている。TシャツのプリントEC最大手のプラスワンインターナショナル(本社東京都、新開強社長)はアイドルグループのイベントに合わせ、オリジナルTシャツをOEM販売し、短期間で大きな売り上げをあげたという。

人気店を陰でサポート

 オリジナルデザインのスマホケースECサイト「phocase(フォケース)」を運営するベーシックは、同サイトの製造販売スキームを他社にOEM提供する「ORIGINAL CASE FACTORY(以下OCF、オリジナルケースファクトリー)」事業を展開している。スマホケースのプリント工場も自社で立ち上げており、iPhoneだけでなく、さまざまなメーカーが製造するアンドロイドの多様な機種にも対応できる体制を構築している。
 B3(ビースリー、本社東京都、前野貴史社長)が運営するスマホケースのECサイト「Ciara(シアラ)」も、OCFを活用している。「Ciara」では、女性向けファッション誌の読者モデルとして活躍する前林由佳子氏がデザインしたスマホケースを販売している。同サイトに注文が入ると、購入者が選んだデザインや対応機種に合わせてベーシックがスマホケースを製造、顧客のもとまで届けるという仕組みになっている。
 B3は、SNSなどを通した前林氏の発信力を活用することなどにより、集客に成功している。製造販売をベーシックに任せ、ECサイトの集客に全力を集中したことが、順調な売り上げの拡大につながったという。ECサイトの人気の高まりを反映し、ユーザーからは、「購入前に実物を見たい」という声が寄せられることが増えた。そこでB3は、都内のファッションビル「パルコ パート1」内にリアル店舗も開設した。店頭でも、在庫品以外はベーシックに製造を任せている。注文を受けた商品は顧客宅に配送したり、店頭に取り寄せて販売したりしている。
 ベーシックはB3以外にも、テレビ東京やバンダイ、ラコステ・ジャパン、サッカーJリーグの川崎フロンターレなどにOCFのサービスを提供している。OCF事業で対応しているアイテムは今のところ、スマホケースがメーンだが、モバイルバッテリーやパスケース、トートバックなどにも徐々に商品の幅を広げている。
 リスクなく自社オリジナル商品を販売できることをアピールすることにより、提携先は右肩上がりで増えているという。


多様なアイテムに対応

 プラスワンインターナショナルは、顧客が指定するデザインをTシャツなどにプリントし、販売するECサイト「プラスワン」を運営している。同社は昨年、提携先のオリジナルプリント商品の製造・販売を請け負う新事業の本格展開を開始した。
 同社は咋年から2年連続で、人気アイドルグループのイベント時に、各メンバーの写真が入ったTシャツのネット販売を請け負った。
 「イベントの際には、自分が応援するメンバーの写真がプリントされたTシャツを買う人が多くいる。ただ、アイドル全員分のTシャツを全サイズ用意するとかなりのロット数になる。人気の偏りもあり、在庫調整も大変だ。当社の仕組みを使ってもらえば、注文を受けてからプリントして販売すればよいため在庫を抱えなくてよい。しかも短期間に大量の注文をさばくことができ、クライアントからも喜ばれている」(新開社長)と話す。

(続きは日本ネット経済新聞 11月19日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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