iPhoneに搭載されている基本ソフトの最新バージョン「iOS9」に、広告の表示などを消す拡張機能が実装された。グーグル・アドセンスなどのウェブ広告のほか、フェイスブックの「いいね」ボタンなども消える。こうした機能の利用が広がれば、EC事業者の集客に悪影響を与えかねない。ブロック機能の詳細と対策を探る。
外部アプリが次々登場
「iOS9」に搭載されたブロック機能は「コンテンツブロッカー」。コンテンツブロック機能を使うための外部アプリをインストールし、端末で設定を行うと、ブラウザー上の広告などを消すことができる。
アプリの種類によって消せるコンテンツはさまざま。グーグル・アドセンスやアマゾン・アソシエイト、大手アフィリエイトサービスのバナーなどのほか、特定の画像や動画を消すアプリも登場している。
フェイスブックの「いいね」など、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のシェアボタンを消せるものもある。
コンテンツブロック機能を使うためのアプリは、広告に煩わしさを感じるユーザーを中心に利用が広がっている。広告などを非表示にすることで、スマートフォン(スマホ)のデータ通信量が減り、ウェブサイトの表示速度が早くなったり、通信料が下がったりするメリットもあるとされる。
アプリのダウンロードは有料と無料がある。ブロックの対象は現在、標準搭載のブラウザー「サファリ」のみ。他のブラウザーやアプリ内の広告は従来通り表示される。
コンテンツブロッカーは、ユーザーのウェブサイト上の閲覧履歴などを追跡する「トラッキング」を拒否する機能も備えている。
トラッキングを拒否したユーザーがサイトを訪問しても、ページビューはカウントできない。
ユーザーの行動履歴や閲覧履歴に基づき、興味や関心の高そうな広告を表示する「リターゲティング広告」も効きにくくなる。
ネイティブ広告に活路
コンテンツブロッカーの利用が広がれば、グーグル・アドセンスやアフィリエイト広告で集客しているEC事業者にとって、消費者にアプローチできるチャンスが減る。SNSマーケティングへの影響も懸念される。
コンテンツブロック機能によるEC事業者への影響は、現時点では深刻化していないようだ。EC支援を手掛けるコンサルティング会社や、SNSマーケティングを支援する企業などによると、クライアントに目立った影響は出ていないという。
iPhoneの国内シェアはスマホユーザーの約5割を占めるとみられるものの、「iOS9」を使っているユーザーが限られる上、コンテンツブロック機能自体の消費者の認知度が低いためとみられる。
ただ、コンテンツブロック機能を有益と感じる消費者が増えれば、今後は利用者が拡大する可能性もある。
コンテンツブロッカーは媒体側の広告表示を消すため、広告を出稿しているEC事業者が打てる対策は限られる。
コンテンツブロッカーの対象外となるアプリ内広告や、記事の体裁で作られたネイティブ広告を増やすことなども有効だろう。
コンテンツブロッカーの影響を意識した広告媒体別の効果測定も重要となる。
【EC売り方研究所】ios9,広告ブロック機能を実装 /ウェブマーケの戦略再構築が必須
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