【EC売り方研究所】おせちのネット通販「各社の販促は」 /販促方法の多様化進む

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おせちのネット通販市場が拡大している。雑誌「婦人画報」を出版するハースト婦人画報社(本社東京都、イヴ・ブゴン社長)がECサイトの顧客を対象に15年8月に行った調査では、過去におせちを購入した場所として通販、ネット注文をあげた人が43%に上り、今後購入したいチャネルでは53%を占めている。おせち市場の競争激化に伴い、多くの事業者が予約販売の開始時期を昨年以上に早めているだけでなく、販促方法も多様化している。オンラインでの告知のほか、DM、電話、カタログといったオフラインでの販促を重要視する企業は少なくない。電話受注を強化するためにコールセンターを内製化した店舗もある。

電話の顧客はリピート
 ネットでおせちが人気の「博多久松」を運営する久松(本社福岡県、松田久美子社長)はネットだけに頼らない販促が特徴だ。
 電話注文の顧客は、リピート率と口コミでの拡散力が高い傾向にあるため、電話による顧客対応を強化している。
 2年前に電話対応部門を外部委託から内製化。問い合わせに迅速に対応できる環境を整えて顧客満足度の向上につなげている。
 今年は6月からオペレーターの募集を開始し、秋以降の繁忙期に向け顧客対応の体制を強化している。新卒採用も積極的に行い、販売数の伸びに合わせた生産体制も構築している。
 久松は13年からDMを開始。大判サイズのDMにすることで、家族全員がDMを囲んでおせちを選べるようにしている。昨年はDM経由の注文数が1万件で、今年は2万件を目指すという。今年は10月下旬にDMを発送する。
 
カタログを強化

 大丸松坂屋は、カタログによる販促を強化した。昨年の購入者に加え、おととしに購入したが昨年は購入していない休眠客に向けてのカタログ送付を今年から本格化。昨年、一部店舗で休眠客向けに合計3000部を送付したところ、約1割の顧客が購入したという。「休眠顧客へのアプローチとして効果がある」(広報)としている。
 高島屋も既存顧客へカタログを発送。既存顧客向けに告知をすることでアウトバウンドなどから購入率を高める効果を期待する。既存顧客向けのアウトバウンドは好調だという。

早期告知で顧客獲得

 ハースト婦人画報社は、メルマガでの情報発信、SEO、アフィリエイトでの広告といったウェブプロモーションを実施。これに加え、発売前の新製品に関する断片的な情報を公開するティザーサイトでの情報発信を今年から開始した。
 8月中旬からティザーサイトでおせちを紹介。雑誌社ならではのコンテンツ作りを強みとして、ブログ形式で情報を発信した。9月25日の発売日には、数時間で数百万円を売り上げたという。
早期からの告知が奏功し、好調な出足となった。
 らでぃっしゅぼーや(本社東京都、国枝俊成社長)は、楽天、アマゾン、dショッピングで10月1日から、自社サイト会員向けに10月中旬からおせちを販売する。楽天でおせちの販売が始まる前に楽天内で水産品の専門店をオープンし、認知を高めて新規客におせちを買ってもらえる導線を作っている。売り上げは前年比50%増を目指す。
 早期告知で比較購買に先手を打つ傾向は強まっている。販促手法や売り出し方はますます多様化しそうだ。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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