第3回目となる今回は、オムニチャネルの次にトレンドになるといわれているIOT(Internet of Things)を取り上げます。「モノのインターネット」あるいは「サービスのモノ化」などと訳されるIOTは、EC業界における「第5の波」ともいわれているテーマです。
IRCEの視察に同行した日本の大手IT企業の代表が、「これからインターネットが来るといわれていた時代と同等のイノベーションが起こることは確実である」と断言するほど、近い未来に迫っているといわれています。
では、IOTが広がることで具体的にどのような変化が起こるのでしょうか。例えば、「アップルウォッチ」などのウェアラブルセンサーから得られる脈波や血圧などのデータを分析し、健康状態を把握することが可能になります。
GPSの位置情報を使って個人の活動状況を把握したり、ネットに接続された家電の使用状況を解析したりすることもできるでしょう。
今後急増すると考えられる「ネットに接続されたモノ」から、無作為に収集される膨大なデータの集合体を解析し、新たなデータを活用しようというのがIOTの概念です。
今、日本でも注目を集めているオムニチャネルは店舗視点の考え方ですが、IOTは消費者視点の考え方です。消費者のレリバンシー(関連性や適合性)に焦点を当てています。
IOTが浸透すれば、顧客情報とリンクした非常にパーソナルなデータが、さまざまなデバイスを通じて膨大に集まり、次のようなことが実現すると想像できます。
例えば、顧客がネット通販で購入したコメの重量と炊飯器の使用状況を分析し、コメを使い切りそうなタイミングで店舗やネットでの買い物中にコメをお薦めすることができます。
仕事の移動距離が長い人には長距離移動時に便利なグッズをさりげなく紹介したり、日々の運動量からお薦めのサプリメントをベストなタイミングで紹介したり…。
つまり、データに基づいて個々の消費者が持つ潜在ニーズを探り当て、商品をサジェストすることで新たな購入動機を産み出すことができるようになるのです。
消費者が生活の中で起こす行動がデータとなり、その膨大なデータを解析してビジネスや福祉に生かす。そのような実に未来的な思考が、すでに数年後という目の前までやってきているのが現実なのです。
IOTという概念がビジネスにどんな影響を与えるのかは、まだはっきりとは分かりません。一説にはIOTの進化で、既存の巨大データセンターの100倍ものデータがたった1日で集まるといわれています。しかもこれが2020年までに実現するというのです。そんな膨大なデータを前に、どんな新しいサービスや商品が出てくるのか。
このビックウェーブに乗るのか、それともただ見ているだけなのか。私たちは新たな選択を迫られているのかもしれません。
【米国EC】「第5波」といわれるIOT
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