中国への越境ECを行うための販路として、EC機能を備えたソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の存在感が高まってきた。SNSのユーザーが、コーディネート写真などの投稿を通じてアパレルや雑貨、飲料などを中国の消費者に紹介するサービスが増えている。国内メーカーは口コミをベースに、初期投資を抑えて中国市場におけるブランドの認知度を高めることも可能だ。一筋縄ではいかない中国市場の攻略に、自社サイトやモールとは異なる販路で挑戦できる。
越境ECに最適化
インアゴーラ(本社東京都、翁永飆社長)が7月7日に提供を開始した、ファッションや雑貨などのコーディネート写真を投稿できるSNS「WONDERFULL(ワンダフル)」は、SNSでありながら中国向け越境ECの機能を備えている。
アパレルメーカーや雑貨メーカー、飲料メーカーなどが自社の商品を登録。「オーナー」と呼ばれる100人のインフルエンサーが商品をピックアップし、アプリ内でセレクトショップを開設できるSNSだ。
一般のユーザーは「ワンダフル」をSNSとして利用しながら、「オーナー」がセレクトした商品を気に入ったら、アプリ内で注文から決済まで行える。
7月20日には中国語のアプリをリリースする。中国人の「オーナー」が国内メーカーの商品を中国語で紹介する。中国の大手広告代理店を通じ、現地で大々的にプロモーションを展開する計画だ。
国際物流や現地での配送はインアゴーラの委託業者が代行するため、国内メーカーは受注した商品を日本国内の倉庫に送るだけでよい。中国の消費者は「アリペイ」などで決済する。国内メーカーへの入金は日本円。
「ワンダフル」には7月7日時点で約50社のメーカーが商品を登録している。登録料は無料で、システム利用料は売上高の5%。「オーナー」に支払う手数料を含め、メーカーが負担するコストは売上高の20%以下に設定されている。
初期投資抑え販売
スタートトゥデイが運営するファッションコーディネートアプリ「WEAR(ウェア)」は今年1月、中国語版を開始した。
「ウェア」はファッションモデルやアパレル販売員、個人などがコーディネートの写真を投稿できるファッション特化型のアプリ。コーディネートに使われている商品の多くは「ゾゾタウン」やメーカーのECサイトで販売されている。
コーディネートは「ウェア」で横断的に検索したり閲覧したりすることが可能なため、参加しているメーカーは国境を超えて商品をアピールできる。
中国では人気女優アンジェラベイビーさんや、女優でモデルのダダ・チャンさんなど40人以上の著名人が「ウェア」に参加。インフルエンサーを巻き込むことでサービスの利用を促進している。
GMOインターネットグループのGMOメディアは今年5月、コーディネート投稿アプリ「コーデスナップ」のユーザーをECサイトに送客する機能を開始した。当初はクロスカンパニーなど6社が利用している。「コーデスナップ」は台湾と香港でも提供しており、現地の消費者にアプローチできる。
コマース機能を備えたSNSを越境ECに活用することで、独自に宣伝やマーケティングを行うことなく中国におけるブランドの認知度を高められる可能性がある。
一般的な越境ECは販促の先行投資が必要だが、SNSでは売り上げに応じてコストが発生するケースが多いため、テストマーケティングにも活用できそうだ。
【EC売り方研究所】〈中国向けECの販路〉/写真投稿SNSが台頭
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