【中国越境ECの”今と現実”】第17回 さらに大きく拡大する中国EC

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■主要サイトの流通額は6兆4000億円

 中国におけるネット通販最大のイベントである「ダブルイレブン(双11、以降W11)」が11月11日に開催されました。今年も大きな盛り上がりを見せ、アリババグループの巨大ECプラットフォーム「天猫(T―MALL)」をはじめとして、中国第2位のECプラットフォーム「京東(JD)」や、その他の有力ECサイトなども軒並み、昨年比で大きく流通額が増加しました。
 中国での主要ECサイトの1日の流通額の合計は、4101億元(約6兆4000億円)となり、もちろん過去最高を記録しました。「W11」1日の配送個数は16億5700個。中国国民1人につき1個以上の配送があった計算になります。
 このように、史上最大のECイベントとなった、今年の「W11」を振り返り、その傾向と特徴に関して振り返ってみたいと思います。


■天猫ユーザーは5億人

 「W11」のメインは、何といっても「天猫」です。19年の流通額は2864億元(約4兆4678億円)でした。これは、楽天の18年度の年間流通額3兆4310億円をはるかにしのぐ規模です。いかに大きな規模であったかが分かります。
 「天猫」の流通額は昨年18年の2135億元から25%も拡大しています。
 この規模になってなお成長スピードを維持するところに、中国EC市場とアリババグループの潜在力がまだ残されていることを垣間見ることができます。淘宝アプリと天猫アプリ(天猫を構成する二つのアプリ)のDAU(デイリーアクティブユーザー数)は5億人を超え、昨年よりも1億人以上も多い数字となりました。これは中国におけるスマホユーザーのEC利用がさらに広がっている証拠です。
 JDに関しては、今年の「W11」の流通額は2044億元を超え、昨年の1598億元から28%の増加となりました。天猫同様、この規模でこの成長スピードには驚かされます。ただ、JDに関しては、11月1日~11日までの期間売り上げ(W11セール期間)のため、正確には1日の売り上げとは言えません。
 中国第3位の拼多多(ピンドードー、PDD)の今年の数字は非公開となっています。実態の数字はつかめませんが、最近の成長の陰りから考えると、公表することが得策ではないと判断したのでしょう。筆者の試算では、約250億元(約3900億円)とみています。
 このPDDに対して、今年元気だったのが蘇寧(スニン)です。蘇寧は家電量販店最大手で、中国でオムニチャネルに取り組む先進的な企業です。
 正式な流通額は発表されていませんが、前年比76%増と言われており、筆者の試算では、今年の「W11」の流通額は約201億元(約3135億円)とみています。
 次回は、「日本のメディアではあまり取り上げない今年の『W11』の特徴」に焦点を当ててお伝えしたいと思います。


〈プロフィール〉
小嵜 秀信氏
 Eコマース初期より大手企業のECサイト・通販運営に従事。その後、EC事業会社、ECシステム会社の経営を経て、中国国内にて輸入品スーパー事業と中国越境EC事業などを手掛ける。また、日本初のEコマース学術研究機関である東海大学総合社会科学研究所Eコマースユニットにおいて、客員准教授として学術研究・教育にも従事。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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