■フォロワー属性を把握
前回、店舗を持たず、ECモールに出店せず、広告費もほとんどかけず、自社ECサイトだけで、月商数億円を実現している「フィフス」というアパレルブランドを紹介しました。
売上拡大のポイントとなっているのが、インスタグラムの活用です。効率的な活用方法として挙げられるのが、インフルエンサー(インスタグラマー)をきちんと管理していることです。
インスタグラマーには、1万~5万人程度のフォロワーを持つ人を選出しています。この場合、芸能人ではなく、インスタグラムの中で有名な人をキャスティングします。顧客となるフォロワーにとって、身近な存在として認識されやすくなるからです。
また、それぞれのインスタグラマーのフォロワー属性もデータで管理します。そのデータをもとに、紹介したい商品に合ったフォロワーを多く持つインスタグラマーに投稿してもらうのです。
このように管理した400~500人のインスタグラマーに、毎月800~1200の投稿をしてもらっています。もちろん、インスタグラマーによるインスタライブの配信も毎日欠かしていません。
費用は、1投稿につきフォロワー数×3~5円。広告に莫大な費用をかけるよりも、PR費としてインスタグラマーに費用をかける方が、効率的といえるケースもあるでしょう。
さらに、インスタグラムの自社アカウントにも工夫を凝らしています。通常、自社サイトへのリンクを貼る場合、インスタアカウントのトップページにURLを貼るようにしている会社がほとんどです。
フィフスでは、インスタグラムで顧客が見ている商品のページに直接飛ぶようにリンクを貼っています。こうすることで、いわゆるカゴ落ちを少なくすることが可能になります。
■無料チャネルで集客
フィフスはこのようにインスタグラマーをうまく活用して、フォロワー数の増加と売り上げを比例させています。インスタグラムからの直接の売り上げは、徐々に大きくなってきています。そのほか、メールマガジンやLINE、オーガニック検索からの売り上げが大部分を占めています。
こういった無料集客チャネル全体で90%の売り上げを上げています。つまり、広告費をほとんどかけることなく、さまざまなツールでブランドの認知度を高めるだけで、顧客が勝手にブランド検索してサイトに訪問してくれるようになっているわけです。その売り上げに対するインスタグラムの影響はこれから大きくなっていくと予想されます。
ちなみにフィフスのように、若年層がターゲットの低価格商品でなければ、インスタグラムの活用は難しいとも限りません。数年後には、現在のインスタグラム利用者は30歳代、そのままインスタグラムが根付けば40歳代、50歳代になっていきます。そのため、高価格帯のリピート商品であっても、インスタグラムを活用する価値はすぐに訪れるといえます。
広告費をかけないインスタグラムの活用方法について、通販会社は常に検討し、いつでも実行に移せるように準備しておくべきではないでしょうか。
〈筆者プロフィール〉
ライフエックス代表取締役社長 工藤一朗
1980年生まれ、大学卒業後、総合通販のベルーナに入社。入社後すぐに売り上げナンバーワンを記録。その後、東証一部上場企業の営業部長などを経て退社。
09年にライフェックスを設立し、一貫して通販・ダイレクトマーケティングに従事する。日本通販CRM協会役員兼務。
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