■独自ドメインで展開
メール、ライン、フェイスブック、インスタグラム、アプリなど、顧客と接点を持つことができるツールがいろいろと増えています。「どのツールをどのように利用して顧客を増やしていくのか」や「LTVをどうやって効率的に向上させていくのか」について、試行錯誤している会社も多いと思います。
そんななか、実店舗を持たず、楽天市場やヤフーショッピングなどのECモールにも出展せず、独自ドメインのECサイトだけで月商数億円を実現している会社があります。この会社は広告投資をほとんど行っていません。それは、5年前に立ち上がったばかりの「fifth(フィフス)」というアパレルブランドです。
「フィフス」は、主に20代の女性をターゲットにした、5000円前後の比較的低価格のアイテムを展開しています。
こういった無名で低価格なブランドの場合、ECモールに出店して集客する方法が一般的だと考える人がほとんどでしょう。
ただ、ECモールにはメリットもありますが、デメリットがあることも事実です。例えば、「出店コストがかかるために薄利になる」「トレンドに左右されやすい」「顧客のデータベースを十分に使えない」といった点があります。顧客管理について、自社のコントロールがしづらいといえます。
独自ドメインのECサイトでの展開を軌道に乗せることができれば、さまざまなメリットが生まれるということができます。
■アパレルで単品のCRM
この「フィフス」の展開については、フィフスを展開するコードシェアという会社と当社がタッグを組んで行いました。
取り組んだポイントは、次の三つです。
(1)自社ドメインECを成長させる
(2)インフルエンサーを活用したPRを行う
(3)顧客との丁寧なコミュニケーションを図る
アパレルの通販会社には、化粧品やサプリメントなどを扱う会社と比較すると、CRM(顧客関係管理)の発想をあまり持っていないところが多くあります。そこで、自社ドメインECを成長させながら、CRMのエッセンスを加えた取り組みを行っていきました。
注力してほしかったのが、インフルエンサーを活用したPRです。フィフスでは、インスタグラムを活用しています。フォロワー数はすでに50万人を超えており、大手ファッションブランドとも肩を並べる勢いです。
インスタグラムは、実はとてもブランディングしやすいツールです。というのも、現在のインスタグラムの利用者属性が、「おしゃれへの感度が高めの20歳代の若者が中心」とはっきりしているからです。また、若い層が多いことから、買い物の価格帯が低めであることも属性として考えられます。
「20代」「おしゃれの感度が高め」「低価格帯」という三つの条件に合致する商品であれば、インスタグラムを活用しない手はありません。フォロワー数の増加に比例して売り上げを伸ばしていくことができるということを、証明した事例の一つが「フィフス」というわけです。
「フィフス」がインスタグラムとインフルエンサーを具体的にどのように活用したのかについては、次回ご紹介します。
〈筆者プロフィール〉
ライフエックス代表取締役社長 工藤一朗
1980年生まれ、大学卒業後、総合通販のベルーナに入社。入社後すぐに売り上げナンバーワンを記録。その後、東証一部上場企業の営業部長などを経て退社。
09年にライフェックスを設立し、一貫して通販・ダイレクトマーケティングに従事する。日本通販CRM協会役員兼務。
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