今年1月、楽天が「送料無料ラインの統一」を発表した。三木谷浩史社長が「送料無料ラインの統一」における成功例として紹介したのが、南米最大級のECモール「MercadoLibre.com(メルカドリブレ)」だ。メルカドリブレは16年8月、「送料無料ラインを統一」したことで成長軌道に乗り、18年には日本円に換算して1兆3880億4300万円もの流通総額を上げている。楽天が参考にしたサービスの魅力はどこにあるのか。本紙記者として取材に奔走し、現在は南米に滞在する志田岳弥氏が、現地で「メルカドリブレ」のリアルに迫った。第1回では、「メルカドリブレ」の特徴や現地ユーザー50人に聞いた利用状況を紹介する。
ECモール「メルカドリブレ」は南米の巨大IT企業、MercadoLibre(以下MELI、本社アルゼンチン・ブエノスアイレス、マルコス・ガルペリンCEO)が運営する南米最大級のECモールだ。
MELIは、中南米でECモールや決済サービスを軸に、物流・金融・広告事業を展開している。「メルカドリブレ」の展開国はアルゼンチンをはじめ、ブラジルやメキシコなど中南米18カ国。
18年におけるECモールの流通総額は、前年比6.4%増の125億490万ドルだった。18年の平均為替レート(1ドル=約111円)で換算すると1兆3880億4300万円になる。
MELIはアルゼンチンの企業だが、ブラジルでの事業規模が大きい。19年4―6月期(純第2四半期)の純利益は、ブラジルで3億4090万ドル、アルゼンチンで1億1390万ドル、メキシコで6440万ドルだった。
■アマゾンより便利
「メルカドリブレ」では、あらゆるジャンルの商品を取り扱っている。妙な言い方になるが、まさに「南米のアマゾン」といえるだろう。
日頃は隣国・チリに滞在する筆者だが、ビザの関係でアルゼンチン・ネウケン州の州都ネウケンを訪れたので、「メルカドリブレ」の調査を実施した。
州都は人口23万人ほどの地方都市だが、国産サービスである「メルカドリブレ」を知らない市民は珍しい。「『アマゾン』と『メルカドリブレ』のどちらがより便利か」への回答は、50人中48人が「メルカドリブレ」と回答した。
家電や電子機器を購入するユーザーが多く、18年の流通総額の38%を占めた。アパレルの流通総額が増加傾向にあり、18年には全体の20%に達した。
ネウケンにおいても「電子機器(スマホなど)」と「アパレル(特にスポーツ)」を購入するとの声が多数上がった。
MELIは16年8月、初の試みとしてメキシコにおいて購入金額30ドル以上で送料が無料になるサービスを開始した。このサービスが「メルカドリブレ」躍進のきっかけとなる。(つづく)
【筆者プロフィール】
志田岳弥氏
91年、東京生まれ。14年、琉球大学農学部を卒業。同年、国際協力機構・青年海外協力隊としてペルー共和国に赴任。2年間、環境教育に従事。17年、日本流通産業新聞社に記者として入社。19年4月に同社を退社し、同年5月よりチリ共和国にてサーモン養殖産業に携わる。
【〈南米ルポ〉楽天が参考にした「メルカドリブレ」のリアル】第1回 送料無料化で成長流通総額は1.3兆円
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