【ネットが拓く〈リテンションの時代〉】連載第22回 顧客はパートナー

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■「挑戦、飛躍」へ

 これから来るのはどんな時代だろう。放浪しつつ食料を手に入れていた「狩猟・採集社会」から始まり、定住し安定して食料が入手できる「農耕社会」、便利なものに囲まれて生活するための「工業社会」、コンピューター・通信端末がWebを通して情報を共有化した「情報化社会」のように推移してきている。やがて来る2020年以降はどんな時代なのだろう。
 この原稿が掲載される4月には新元号が発表されているが、平成が終了したら何が始まるのか。わが国のことを考えれば、4月までは「平成最後の○○」と銘打ったイベントが花盛りだった。
 新天皇ご即位・新元号制定後の5月は「△△最初の…」と銘打ったイベントが始まり、6月になると大阪G20サミット、夏以降に5Gサービスの試験運用、9月にラクビーワールドカップ、10月に消費税増税とビッグイベントが目白押しである。新元号制定をきっかけに「挑戦し、飛躍する」が目立つ時代になるのではと考えている。
 世界に目を向ければ「情報化社会」に続く時代は、「インダストリー5.0」とか「ソサエティー5.0」とか、それぞれの国がいろいろな思惑で提唱している。
 コンピューターパワーの劇的拡大、ビッグデータの実用化、AIの一般化、第5世代(5G)サービスの本格化が巷間を席巻し、それらは複合しながら一挙にデジタルトランスフォーメーションが進化していくだろう。


■客の行動が重要

 消費者行動もそんな変化に足並みをそろえ、複合化された新技術や、新しいインフラを利用した暮らし方や生き方に挑戦せざるを得なくなる。
 今、夢の話のようにささやかれている遠隔医療や自動運転にしても、20年以降はオリンピックを契機に急速に進化し、多種多様な側面でICT(情報通信技術)が幅広く生活の中に定着してくる。
 20世紀のマーケティング書「第三の波」で、21世紀は「プロシューマー」と呼ばれている人が登場すると予想されていたが、それを超えた「消費者兼プロデューサー」が登場してくるであろう。
 20年以降は「消費者自らがメディアや商品開発者になっていく」ということ。つまり、ニュース配信、広告、PR、商品企画・製造、販売の企業活動のすべてを実行する消費者が誕生すると思われる。
 消費者の行動がメーカーに影響を与えるようになり、「消費者は顧客」から「消費者はプロデューサー」と読み替えるような発想が一般化し、やがて「お客さまは神様」から「お客さまはパートナー」に移行していくだろう。
 お客さまの発する意見や思考ではなく、行動自体が重要となる。そのとき必要なのは、的確にお客さまとつながり、パートナー化を推進するリテンション・マーケティングである。
 新しい時代は、商品開発や販売施策でパートナーと協業するようになるであろうし、「お客さまは神様」と言う言葉は、平成時代の名残となっていくであろう。


〈プロフィール〉
伊藤 博永(いとう・ひろなが)
 1993年3月、旭通信社(現ADK)入社。2001年4月、価値総研取締役、09年4月、ADKダイアログ代表取締役、12年1月、アディック取締役(現任)、15年9月、日本リテンション・マーケティング協会理事、18年4月、日本リテンション・マーケティング協会監事(現任)。

 筆者に関する問い合わせは、一般社団法人日本リテンション・マーケティング協会事務局((電)=03—6434—0703)まで。http://j−rma.jp/

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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