【中国越境ECの”今と現実”】第12回 通関次第で効率的な越境ECに

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■急拡大した保税倉庫

 前回に続いて、中国越境ECの関税の仕組みについて説明します。
 中国越境ECでは、商品代金に対して課税されます。送料無料対象商品は、本体と送料が一緒に課税されるため、結果として、越境税を多く払い、収益が想定以上に減ることがありますので注意が必要です。
 ここで二つの越境EC通関を紹介します。
 保税倉庫からの出荷は、中国越境ECではよく聞かれます。通常、海外からの商品を保税エリアに置いている間は課税されません。その後、通関で関税を支払い、保税エリアから国内に入った時点で正規の輸入品となります。
 越境EC専用の保税倉庫に商品を入れて保管する時点では関税がかからず、販売した商品を出荷する時点で商品に個別に越境税を支払えばいいため、大変効率のいい通関となるわけです。
 ご存知の通り、EMSやクーリエによる配送には、1キログラムあたり約2000~3000円程度の配送料がかかります。まとめて出荷する場合、1立方メートルでも海上輸送量は数千円程度(ここに通関料や通関手数料などが1配送ごとにかかりますが)かかります。保税倉庫からの出荷は、量がある程度まとまっていれば、EMSと比較にならないほど安く運ぶことができます。
 中国国内の配送料は、場所によって変わりますが、都市部であれば、5~10元(80~160円)程度です。中国国内の商品とほぼ同じ条件で商品を配送できるわけです。

■大口でまとめて通関

 大ロットの商品群を、まとめてその都度越境EC通関する形式についても説明します。以前はEMSやクーリエによる個別配送が主だったため、1個当たりの配送料がどうしても高額でした。商品をまとめてその都度越境EC通関する方式では、個配の料金をかなり抑えることができます。あらかじめ出荷する予定の商品リストを税関側に提出をしておくからです。
 その都度越境EC通関する方式では、最も配送料がかかる、日本から中国への輸送費が、大口貨物同様となり、1個当たりの料金が割安になります。
 通関方式は保税倉庫同様です。単に商品在庫を保税倉庫にあるものから取り崩して個別に通関するのか、海外からまとめて送られたものをその都度通関するのかの違いです。
 このように、越境EC制度を活用した通関には2種類ありますが、通関方法はほぼ同じです。大量に売れるものは保税倉庫へ海運し在庫を積んだ方が料金的にも安くなります。ただ、売れ残った際に、在庫リスクを抱えることになります。
 特に中国の越境ECで保税倉庫を使っている場合、まだまだ未整備な分が多くオペレーションが確立されていないため、日本への在庫の送り返しが容易にできないケースが多いのが実情です。
 不良在庫は倉庫内で費用を払って処分するか、安売りして処分するケースがほとんどです。そのリスクがある場合は、保税倉庫に在庫を補完するよりも、個別に越境通関を行う形式で送る方が、結果としてロスを少なくすることができます。
 この二つの形式をうまく組み合わせることにより、その企業が運営するサイトでの効率的な越境EC物流を作り上げていくことができます。


〈プロフィール〉
小嵜 秀信氏
 Eコマース初期より大手企業のECサイト・通販運営に従事。その後、EC事業会社、ECシステム会社の経営を経て、中国国内にて輸入品スーパー事業と中国越境EC事業などを手掛ける。また、日本初のEコマース学術研究機関である東海大学総合社会科学研究所Eコマースユニットにおいて、客員准教授として学術研究・教育にも従事。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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