【ネットが拓く〈リテンションの時代〉】連載第21回 顧客との接点見つけ追いかける

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■企業と顧客の絆やつながり

 昨年末にブランディング(ブランド構築)とロイヤルティー形成の話を書いた。書いた後で消化不良の感じがしたので、もう少し考えてみた。これまで日本では、ブランドロイヤルティーという言葉で、ブランド構築とロイヤルティー形成をひとくくりにしていた。
 長年、広告業界で勤務していたため、ブランディングについてはいろいろと経験し、いろいろなお客さまのブランドを作ってきた。
 しかし、ロイヤルティーについては広告・販促・イベント等のさまざまな施策の結果としてしか見ていなかった。今回はブランド構築とロイヤルティー形成に分けて考えてみたい。
 とはいっても厄介なのが、ブランド構築もロイヤルティー形成も、最終ゴールは継続して購入してもらうことである。最終ゴールが同じなので、つい同一のことと考えてしまうのではないだろうか?
 どちらも消費者の行動形態としては「知っている、購入する、購入を薦める」状態であり、心理としても「ブランドが好き、誇りに思う、使用している自分が好き」なので、継続していくと考えられる。
 ブランド構築とロイヤルティー形成に共通して関与しているのは、企業の発信と顧客の受容である。簡潔にまとめると、企業と顧客とのエンゲージメントと考えている。
 エンゲージメントというと、また新しい言葉が出てきたと思われるだろうが、日本語では「絆、約束、つながり…」のことである。昔は企業組織内や商店街などのように閉じた空間でしか使用できなかった。


■五感を使って感覚醸成行う

 例えば、「社内エンゲージメントの強化」というように使用していたが、SNS、メール等が発達した現在では、企業の受発信も個人の受発信も瞬時にできるようになってきている。グローバルに企業と消費者のコミュニケーションが、たやすく実行できるようになってきたことが、エンゲージメントという言葉が注目されている要因であろう。
 では、ブランドの魅力をしっかりと伝え、ロイヤルティーを形成するエンゲージメントとは何なのか? 具体的に考えていくと「デジタルの向こう側」で書いたように、デジタルとリアルの融合ではないかと思っている。
 ブランド構築にはデジタルでさまざまなアプローチを行い、認知・購入・推奨の基盤ができたところで、リアルな世界で人間の持つ五感をフルに使っての感覚醸成を行い、好きになってもらいながらロイヤルティー形成をしていく。
 これからのマーケティングに必要なことは、デジタルで広くブランド構築を行いながら、顧客に対して寄り添うようにエンゲージメントを高め、ロイヤルティー形成をしていくこと。
 つまり、顧客との接点を可能な限り発見しながら顧客を追いかけることである。どのようなエンゲージメントがロイヤルティー形成に有効なのか? 意思疎通に可能な場所はどこなのか? を見極めながら進めることでロイヤルティー形成が達成できる。


〈プロフィール〉
伊藤 博永(いとう・ひろなが)
 1993年3月、旭通信社(現ADK)入社。2001年4月、価値総研取締役、09年4月、ADKダイアログ代表取締役、12年1月、アディック取締役(現任)、15年9月、日本リテンション・マーケティング協会理事、18年4月、日本リテンション・マーケティング協会監事(現任)。
 筆者に関する問い合わせは、一般社団法人日本リテンション・マーケティング協会事務局((電)=03―6434―0703)まで。http://j-rma.jp/

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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