【ネットが拓く〈リテンションの時代〉】連載第18回 再びロイヤルティを考える

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■個人的検証は買ったときに
 今年の夏、ロイヤルティについて書いたとき、「概念は分かるけど何から始めたらよいのか分からない」とのお問い合わせをいただいた。
 ロイヤルティについては、日本リテンションマーケティング協会(JRMA)が日本消費者行動研究学会と共同でワークショップを実施し、約3年間にわたりロイヤルティ構造の研究や参加企業のデータ分析などを続けているが、まだまだ明確に分かっていないことも多い。
 ワークショップの結論は出ないし、JRMAの見解も出ないが、自分の中にロイヤルティが生まれる瞬間はいつなのかを、個人的に検証してみた。
 「名前や由来を知ったとき?イイナと思ったとき?もっと知りたくなったとき?買ったとき?」この4段階の変化を考えたところ、私の場合は最終段階でロイヤルティが形成されていると感じた。
 3段階目まで徐々に好きになっていくわけであるが、まだロイヤルティといわれるレベルまで行きついていないと感じている。
 ブランドに対してお金を払い、使用して満足したときにロイヤルティが形成されるのではと思う。もちろん、買い物の際の店舗のたたずまいや、店員への満足感がロイヤルティの形成には大きな要素となる。

■リテンションがロイヤルを形成
 未購入客と既購入客に分けて考えてみよう。未購入客に対して、企業からのDMやメールなどの接触があり、その内容が未購入客の期待を超えれば認知と好意度は上がる。
 購入に至る過程を考えると、商品のデザインや機能が期待を上回り、店のたたずまいと接客が気に入り、その商品の世界観が好ましければ、認知と好意度の次の段階である購入に至ると考える。
 既購入客の場合には、DMやメールはその内容が既存顧客の期待を上回ればロイヤルティを高める効果はある。自分も買うし、友人や知人に購入を薦める行為も出現する。
 ここまで考えたとき、ブランドロイヤルティという言葉を「ブランド構築とロイヤルティ形成」の二つに分けて整理する必要があることに気付いた。
 広告代理店に勤めていたとき、ブランド構築はコミュニケーション費用がかかるためお金になる仕事であったが、ロイヤルティ形成については、心の中の問題なので代理店としては手の施しようがなく、さまざまな調査を実施して心理変容を把握することにとどまっていた。
 ブランド構築については「認知↓行為↓購買動機付け」のステップを踏みながら進展すると考えていたから、名前を告知し、好きになってもらうために特徴と機能性の良さを伝え、欲しいという購買動機付けに進んで行った。
 購入が実現したところで評価を高める施策を実行すれば、ロイヤルティがより強化できた。その後は購入客の反応を把握し、到達できなかった要素を改善していく。
 この繰り返しを行っていけば、自然にロイヤルティは強固なものになると考えて実践していった。これからは顧客とのさまざまなリテンションを行使して、ロイヤルティ形成を図っていくことが必須となる。(月1回掲載)


〈プロフィール〉
伊藤 博永(いとう・ひろなが)
 1993年3月、旭通信社(現ADK)入社。2001年4月、価値総研取締役、09年4月、ADKダイアログ代表取締役、12年1月、アディック取締役(現任)、15年9月、日本リテンション・マーケティング協会理事、18年4月、日本リテンション・マーケティング協会監事(現任)。
 筆者に関する問い合わせは、一般社団法人日本リテンション・マーケティング協会事務局((電)=03—6434—0703)まで。http://j−rma.jp/

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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