【百戦錬磨の仕事人が語る”企業再生術”】第5回(最終回) ”顧客の声”どう生かすかで未来が変わる

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 今回はEC企業のコールセンター活用についてお話します。多くのEC企業は電話での顧客対応を最小限にしたいと考えると思います。顧客のLTVを高めるために電話対応の重要性が高いリピート通販企業でも同様で、効率化を図るという名目でコールセンターをアウトソースするケースが増えています。
 ただ、コールセンターをアウトソースすることで、顧客理解はどうしても低下してしまいます。本来、マーケティングを行う上で顧客を知ることが必要不可欠なはず。EC企業は直接顧客との対話を分断されることで、顧客の姿を見失いがちになり本質的なサービスの改善ができなくなる可能性があります。


離脱率60%に改善

 AIGATEグループで手掛けている通販企業はアウトソーシングしていたコールセンターをグループ企業に移管したことで、退会希望者の離脱率を85%から60%に改善できました。
 これは顧客理解を深めたことで実現できた結果です。何をきっかけに商品を買ったのか、どんな理由で退会しようとしているのか、顧客の声をダイレクトに聞くことで、顧客対応時のコミュニケーションを変えたり、サービス内容をブラッシュアップすることができたのです。
 さらに顧客の声を商品開発に生かすこともできます。先日、1年半ぶりにリニューアル発売した新商品は顧客の声を基に開発しました。頭皮ケア商品によくあるアルコール臭をカットしたことで顧客からの評価も高く、売れ行きは好調です。


Q&Aデータが資産に

 私はブックオフの店長をしていた時代から顧客の声を大事にしてきました。リアル店舗だと対面で接客するのでお客さまの声がどんどん入ってきます。
 顧客の声を聞くことができればルールやサービスをブラッシュアップできます。これはECでも同様で、メーカーや販売者と顧客の声を聞けるコールセンターが分断されていると、貴重な資産を有効に活用しづらくなります。
 今後、AIの時代に入ったときに、顧客とのやり取りのデータはさらに価値を生むと考えています。近い将来、ユーザーはスマホでチャットボットとやり取りをして商品を買ったり、問い合わせをするのが当たり前になります。
 チャットボットが顧客の質問に答える際にはFAQのデータベース(DB)が重要になります。コールセンターで顧客とのQ&Aをデータとして蓄積していれば、自分たちのブランドやショップに最適化された高い精度のチャットボットを構築することができます。


音声DB蓄積を支援

 AIGATEグループではすでに、コールセンターにおけるQ&AのDB化を進めています。音声データをテキストに落とし込む技術はかなり進んでおり、高い精度でデータ化できるようになりました。
 これはAIGATEがグループにメーカーとコールセンターを抱えているからできることです。まだ実験段階ですが、コールセンターのDBは必ず貴重な資産になると考えています。
 もし興味があるメーカーがありましたら、コールセンターの受託だけでなく、音声DBの蓄積もお手伝いさせていただきます。(おわり)


〈著者プロフィール〉
AIGATE 竹尾昌大社長

 81年、鹿児島県生まれ。鹿児島大学在学中にOBである京セラ創業者、稲盛和夫氏が開講していた経営塾「稲盛アカデミー」に参加。大学3年時にブックオフコーポレーションの創業者、坂本孝氏と出会い、経営不振だった鹿児島のブックオフ店舗を任される。27歳で福岡の化粧品通販会社に参画し、化粧品・美容サプリ通販の事業運営に従事。その後、売り上げが伸び悩んでいた、美と健康商材を扱う化粧品通販会社をファンドとともにハンズオン投資し、代表取締役に就任。短期間で飛躍的に事業を成長させ、その会社を韓国財閥企業へM&Aする。18年3月、これまで蓄積してきた企業「再生」のノウハウ、M&Aの体験を生かすべく「AIGATE(アイガテ)株式会社」を創設した。

■AIGATE ホームページ
 http://www.aigate.co.jp/

■ サイトM&A仲介サービス「 ReSite(リサイト)」
 https://ai-resite.jp/

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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