【中国越境ECの”今と現実”】第8回 米中貿易戦争は越境ECには影響少なく

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■日本人の知らない越境ECサイト
 前回は、唯品会(VIP)、亜馬遜(Amazon)、小紅書(RED)といった、大手に次ぐ越境ECプラットフォームについて取り上げました。その中でも、ソーシャルメディアと連携して急成長している小紅書(RED)は、口コミマーケティングの起点や、実際の商品販売の場として利用されているということをお伝えしました。
 その他に、聚美(JUMEI)という、2010年にオープンした化粧品の特売オンラインショッピングサイトもあります。聚美では、海外のブランドコスメが、女性ユーザーを中心に、大変な人気を集めています。海外のブランドコスメを聚美から直接購入できるという点では、聚美の越境ECも同様に人気があります。
 蘇寧(スニン)という、中国の大手家電量販店が運営するECサイトも人気があります。近年では、中国のEコマースの急速な発展により、実店舗も大きく減速し、ネット通販に力を入れています。
 豊趣(fengqu)、達令(ダーリン)はそれぞれ親会社が物流会社の越境EC企業です。海外と中国との物流網を生かした仕組みで越境ECに力を入れています。
 このように、中国越境EC市場には、まだ日本で知られていない越境ECサイトが多く存在します。常に新たな情報をキャッチアップしておくことが必要です。


■ジャンルが異なる対象商品
 最近、米中の貿易戦争の話題が日本のメディアでも大きく取り上げられております。中国越境ECに対して、今回の問題がどのような影響を与えるのかについて、最近よく問い合わせを頂きます。大学の講義においても、学生から質問が出ます。中国経済全体に対する影響に関しては他の専門家に解説を任せるとして、本稿では、越境ECにどのような影響を与えるかについてひも解きます。
 現在のところ、米中貿易戦争において、中国側が米国に対して報復関税として、税率の引き上げを行っている主な商品ジャンルは、果物類、アルコール類、鋼管材、豚肉牛肉類、タバコ、自動車、化学試薬、航空機などです。
 中国越境ECにおける主力商品は、日用品が多く、ベビー用品、ベビーフード(粉ミルクなど)、健康食品、コスメ、ファッション、雑貨、3Cデジタル家電などです。そのため、今回の米中貿易戦争において、中国越境ECの主力カテゴリーと、今回の報復関税対象カテゴリーの重複は少ないといえます。
 HScode(徴税に関するシステムの番号)上は、輸入完成品と原料とで番号が異なります。そのためたとえ、越境輸入商品の中に、税率が引き上げられる原料が含まれていたとしても、輸入品の税率は影響を受けません。
 中国越境EC市場における、主力商品(ベビー用品や健康食品)の相手国は日本、韓国、タイ、オーストラリア、ニュージーランドなどとなっております。米国から中国への越境EC商品は、主にファッション関連です。このため、短期的に見れば、米国からの越境EC商品においても、さほど影響は受けないと思われます。
 「主力ジャンルと報復関税対象ジャンルの重複が少ない」「米国が強みを持つ商品カテゴリーが、中国越境ECの主力カテゴリーに占める割合が少ない」の2点から、今回の米中貿易戦争において、中国越境ECへの影響は少ないといえます。(つづく)


〈プロフィール〉
小嵜 秀信氏
 Eコマース初期より大手企業のECサイト・通販運営に従事。その後、EC事業会社、ECシステム会社の経営を経て、中国国内にて輸入品スーパー事業と中国越境EC事業などを手掛ける。また、日本初のEコマース学術研究機関である東海大学総合社会科学研究所Eコマースユニットにおいて、客員准教授として学術研究・教育にも従事。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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