データで販路広げる発想
前回は、コミュニケーションの窓口やコンテンツ発信ツールとしてのLINEの活用法をお伝えしました。
今回は顧客データを接客に活用する際の考え方についてお伝えします。
近頃、「チャネルシフト」という発想がうたわれています。これはウェブを基点として得たデータを、実店舗での接客に活用する、というものです。中国では、同様の「OMO(オンライン・マージ・オフライン)」という概念が広まっています。「マージ(merge)」とは「融合」という意味です。
しかし、問題は「どのデータをどう活用するか」ということです。
購買データだけでは顧客分析を行うのに十分とは言えません。「ウェブでの閲覧履歴」と、「どんな人物が、いつ、どこの店舗で、どのような商品を購入したか」という情報を、融合して蓄積させなければなりません。
例えば、実店舗のポイントカードとオンラインサイトの会員登録情報をひも付けるといったことが挙げられます。
データは顧客に「還元」
ここで重要なのは、取得したデータは、「顧客にサービスで還元する」ために使用するという考え方を持つということです。
例えば、スタートトゥデイの開発した「ZOZO SUIT(ゾゾスーツ)」などは、データを顧客に還元する好例といえるでしょうゾゾスーツは、顧客が自宅で着用してスマートフォンのアプリで撮影すると、手軽に詳細な身体計測ができるというものです。
この導入により、ZOZOは顧客の体型を把握し、サイト内のレコメンド機能の精度を上げることができたわけですが、そのデータは、何よりも、顧客に対して、「どの服が自分の体に合うのかすぐ知ることができる」というメリットを提供するために使用されたのです。
データは、やみくもに取ればよい、というものではありません。意味を付けて初めて価値を持ちます。
マーケティングオートメーション(顧客情報を一元管理し、ウェブにおけるマーケティングを自動化するソフトウエア)を導入しても、うまく活用できず、結局はコンサルタントに相談することになった、という例も少なくないのです。
とある大手ポータルサイトの戦略担当者からは、目的を設定せずに取得可能なすべてのデータを取っても、何の役にも立たなかったという話を聞きました。
まずは、「データ取得によって顧客にどんなメリットやサービスをフィードバックできるか」を考えましょう。
その目的を設定してから、どのようなデータを取るのか決めることです。ただただデータを取得したり、何か新しくシステムを導入したりしても、有効な効果は得られないでしょう。
また、データの活用範囲は限度を定めておきましょう。顧客に「監視されている」と感じさせるような過度の使用は避けるべきです。
データは、あくまでも顧客の利便性向上にのみ活用することが重要です。(つづく)
〈プロフィール〉
ビジョナリーホールディングス 執行役員 デジタルエクスペリエンス事業本部 事業本部長
川添・隆(かわぞえ・たかし)
アパレル関連企業2社を経験後、前職ではEC事業責任者として売上倍増に寄与した。2018年4月よりビジョナリーホールディングスで現職。ECを4年で3・4倍に拡大。オムニチャネルに取り組む傍ら、コンサルも手掛け、EC関連のセミナーにも多数登壇している。
【踊らされない!戦略的自社ECのTEC活用術】第7回 顧客に還元するデータ活用
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