■個人ECが増加
前回の連載では、私が立ち上げたブランドのコンセプトは「自分が欲しいものを作る」と紹介しました。今回は、コンセプトに至る背景を書きたいと思います。キーワードは「個人化」と「共感」です。
インターネットのない時代に、自分のブランドを立ち上げ、販売していくことは非常に大変でした。百貨店や小売店に営業し、採用されて初めて卸すことができ、着実に実績を積みながら数を増やし、ブランドを浸透させる、というやり方だったと思います。
買っていただくお客さまの顔は見えません。販売会社の担当者の顔を見ながら商品を作る、ということもあったかもしれません。
そこへ、お店を持たず、カタログを顧客の家に送り、エンドユーザーから電話で直接注文を受けるカタログ通信販売が広まりました。エンドユーザーに対する直接販売のため、間に卸業者が入りません。店舗を持つ必要もないため、安い価格で高品質なものを提供できます。こうして、カタログ通信販売というチャネルが生まれました。
時代はさらに進みます。今では、個人レベルでも売り場(ECサイト)を持ち、集客(ネット広告)できます。もちろん、そこにはノウハウがあります。ただ、いろいろと試してみるにも、昔ほどのお金はかかりません。
■多様化する好み
一方で、購入者の趣味趣向も多種多様になりつつあります。インターネットのない時代には、ファッションの情報をテレビ、雑誌などから得ることが普通でした。これがはやるとなれば、人はみんな同じものを身に付けるような時代です。
今は情報源がインターネットです。さらに、個人が発信する情報がどんどん増えています。情報が多様化すれば、購入者の趣味趣向も多様になってきます。個人(でなくとも、小さな組織)が、面白いもの(情報・商品)を発信する。プレイヤーの増大。この流れは止まらないと思います。
もう一つ傾向を述べるとすると、これからは「共感」の時代だと思います。従来は、マス広告などを使い、買ってもらうための広告を打っていました。そして、多くの人に買ってもらうというビジネスモデルでした。
現在のインターネットの時代は、たくさんの仕掛け網をはり、インターネットの検索によりかかった人を捕まえます。ニーズを拾っていくやり方です。
このやり方は残っていくと思います。そのときのフックになるのが「共感」です。「テレビ、雑誌が言うから買う」ではなく、自分で調べて、共感するから買う。こういった流れになっているのではないかと思います。(つづく)
〈プロフィール〉
しまもと・だいすけ
ウエブ制作会社でディレクターとして活躍後、キノトロープを経て、ライブドアに入社。数多くの企業ウエブサイト構築プロジェクトに携わる。その後、セシールでネットマーケティング本部統括、常務執行役員。fitfitでCOO。商品企画から店舗立ち上げ・運営、カタログ販売まで幅広い業務を統括。16年、coen(現・YUAN)を設立。
【ゼロから始めるブランド開業日記】第4回 個人への共感がビジネスに
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