前回は、オフライン顧客情報の可視化が必要であることを提案しました。
今回は、顧客データを可視化・分析・仕分けした後にやるべきことについて解説します。
■顧客データの活用
以前に、リピート通販は「恋愛と同じだ」という話をしました。リピート通販では、顧客の継続率に応じてコミュニケーションの仕方が変わります。タイミングに合わせて関係を築いていかなければならないのです。
これまでオフライン顧客だったお客さまと、初めてデジタルでのお付き合いが始まった場合も同様です。顧客データを分析・仕分けしただけでは意味がありません。デジタル化したデータや端末情報をひも付けた顧客リストなどをうまく活用しましょう。
前回お伝えしたように、オフライン顧客の可視化の第一歩は、「顧客のメールアドレスの取得」です。その後、自社ECサイトのランディングページ(LP)に誘導します。そうすることで、顧客のLPの滞在時間はもちろん、LP内のどの部分に長く滞在しているのか、どの部分で離れたのかといった行動分析を行うことが可能になります。行動分析結果を効率的なPDCAにつなげることもできるようになるのです。
例えば、分析データから、多くの既存顧客が、特定の疑問を解決するために、ある情報が書かれたページを訪問していることが分かったとします。そこからは、そのページにたどり着く前の段階で、その特定の情報に関するアウトプットが弱かったのではないかということが読み取れます。その解決方法としては例えば、商品の発送時にアウトプットするべき情報を分かりやすく掲載したDMを同梱するといったことが考えられるでしょう。
ちなみに、メールアドレスさえ取得すれば、リードナーチャリング(見込み顧客の育成)に力を入れることも可能です。メールアドレスを取得すれば、顧客のLP内での行動を把握することも可能になります。そうしたデータを基に、再度サイトに訪問してもらえるような広告を打つこともできるようになるのです。
■広がる新しい世界
かなり未来の話ですが、デジタル化して顧客のあらゆるデータを大量に保有してしまえば、無限の戦略を駆使できるようになります。
それをすでに実現しつつあるのが、Amazonや楽天です。例えば、Amazonには「プライム会員」という有料会員の制度があります。これは「サブスクリプション」という仕組みです。
プライム会員に登録することで、送料無料のサービスを受けられたり、動画・音楽を無料で視聴できたりします。こういった付加価値をどんどん高めていくことで、消費傾向や需要に関する大量のデータを保有することができるようになるのです。
さらに今後は、モノを”買う”という感覚ではなく、提供される付加価値の集合体(サブスクリプションボックス)の中からモノを”利用する”という感覚にシフトしていくともいわれています。
現在、オフライン顧客のデジタル化に苦労している企業でも、リピート通販であればサブスクリプションの世界を作っていくことは可能だと思います。(つづく)
〈筆者プロフィール〉
ライフエックス代表取締役社長 工藤一朗
1980年生まれ、大学卒業後、総合通販のベルーナに入社。入社後すぐに売り上げナンバーワンを記録。その後、東証一部上場企業の営業部長などを経て退社。
09年にライフェックスを設立し、一貫して通販・ダイレクトマーケティングに従事する。日本通販CRM協会役員兼務。
【リピートEC 成功の秘訣「真の顧客満足向上とは」】第5回 オフライン顧客をLP誘導でデータ収集
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