■強まる税への監視
Amazonが米国以外の国にはほとんど法人税を納めていないことはよく知られています。
しかし、決して法律に違反して課税逃れをしているわけではありません。日本であれば、日米の租税条約に則って現在の状況になっているのです。
Amazonは、他社が追随できない独自のサービスや、どこよりも安い販売価格・配送料を目指して顧客満足度を高めながらも、一方でこうしたサービス拡充に大規模な投資を行い、節税につなげているのです。
しかし、ここのところ、AmazonをはじめとしたEC企業について、税に対する監視の目が世界中で厳しくなっています。
昨年には欧州委員会が、ルクセンブルクでのAmazonの租税逃れを認定し、Amazonに対して、約330億円の追徴課税を指示しました。
米国でも6月21日に、日本の消費税にあたる「売上税」を納めていなかったEC事業者に対して、各州に税の徴収を認める判決が最高裁によって出されました。Amazonも大きく影響を受けるでしょう。
日本政府もAmazonから法人税を徴収したいはずです。例えば、Amazonが日本に納めている法人税は、同じEC大手の楽天の30分の1程度でしかないとも言われています。
Amazonの日本法人から法人税を徴収できるよう、法整備が今後強化されていくことは、間違いないでしょう。
ただし、Amazonが日本に多額の法人税を納めるようになった場合、出品者や購入者に与える影響は少なくないはずです。
特に出品者においては、販売手数料など各種手数料の値上げが懸念されます。その結果として、利益率が圧迫されれば、販売価格を上げざるを得なくなり、それが購入者のデメリットとなる、という悪循環も想像されます。
■有利に展開できる力を
出品者は、将来考えられるAmazonへの法人課税に対して、どう構えておくべきなのでしょうか。
まずは、自社の商品力をつけることが重要です。
新たなブランドを自ら作り上げ、商品の特徴や品質、価格などの面で、お客さまから満足してもらえるPB商品を開発するといったことが大切です。
PB商品は利益率の改善につなげやすく、今後Amazonから新しい負担を強いられることになっても、競合と比較して淘汰されにくくなるでしょう。
また、Amazonと交渉できる力をつけることも重要です。
例えば、自社商品がAmazonのランキングで常に上位にランクインするなど、各カテゴリーにおいて売上上位の出品者になることができれば、Amazonの新サービスをテストユーザーとして先行して利用できたり、Amazonの担当者が付いて優位に露出を確保できたりします。Amazonに対して交渉力を持つことができるようになりますし、いろいろと有利な待遇も受けやすくなります。
このように、出品者として自ら有利に展開できる力を今から身につけていくべきです。自社の商品がAmazonで販売されなくなることがAmazonのデメリットになるならば、競合よりも有利に激化する競争を勝ち抜いていけるでしょう。
〈プロフィール〉
比良益章(ひら・ますあき)
2006年楽天入社、ECコンサルタント、マーケティング担当などを経験。2009年アマゾンジャパン入社、新規開拓営業、コンサルタント業務に従事し、5期連続でトップ成績を獲得。2010年アグザルファ設立、代表取締役に就任し、Amazon専門のコンサルティングを展開。
【Amazon出品〈気になるトピックを徹底解説!〉】第5回 将来の課税に備え商品力と交渉力を
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