【中国越境ECの”今と現実”】第5回 天猫、京東、考拉の3強の中国越境EC

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 中国EC市場のメインプレイヤーといえば、やはりアリババの運営する天猫(Tモール)です。
 現在、総流通額約4兆6000億元(約78兆円)で、中国EC黎明期から市場をけん引してきました。黎明期当時は淘宝(タオバオ)という形でECモールを形成していました。
 続いて中国第2位の京東(ジンドン、JD)です。総流通額は約1兆3000億元(約22兆円)です。この1位と2位で市場の約90%を占めており、3位以下を大きく引き離しております。
 ただ、越境ECの現状は、必ずしも同じではありません。アリババの天猫国際(Tモールグローバル)と京東全球購(JD Worldwide)に考拉(Kaola、コアラ)を含めた3強となっています。流通額は3サイトとも大差がありません。


■圧倒的シェア誇る天猫

 天猫国際は、14年に越境EC事業をスタートしました。
 天猫には、中国国内企業しか出店ができません。当時、中国でECが急速に発展し、直接海外のサイトで購入するユーザーが増えていた時期です。今後、越境ECは急速に伸びると見込まれていました。そこでアリババは、海外の企業も中国EC市場に簡単に参入できるように、中国国内企業は出店ができない、海外企業専用の天猫(Tモール)をスタートしたのです。
 サーバーは香港に置き(そのためドメインはtmall.hk)、商品も必ず海外から発送するというルールです。
 スタートした当時は、出店する企業も少なく苦戦しましたが、天猫(Tモール)からの流入が他に比べて圧倒的であることは、中国進出を考える企業にとっては魅力的です。
 中国への正規輸出(一般貿易)が難しい商品を扱う場合も同様です。中国越境ECの新しいルールが形成され、物流と通関が飛躍的に便利になったことで、出店企業は大幅に増加し、今や中国を代表する越境ECモールとなりました。
 天猫国際は、基本的に企業が出店する形態となっております。出店の際、運営代行を専門に受け持つTP(Tモールパートナー)への運営委託をするケースが多くみられます。ただ、近年の越境ECブームに伴い、天猫国際への出店のハードルは高くなっています。日本国内で圧倒的な知名度を持つ企業でないと出店できない状況となっております。


■Amazon型の京東

 一方、京東全球購(JD Worldwide)は、中国第2位のECプラットフォームである京東(JD)が始めた越境EC専用プラットフォームです。運営しているのは、アリババのライバル企業でもあるテンセントグループです。
 天猫(Tモール)同様、香港にサーバーを置き、ドメインは(jd.hk)です。
 天猫が基本的にモール形式であるのに対し、京東(JD)は自社サイトで、そこにモールを併設する形となっております。日本のAmazonと同じ形式です。(つづく)


〈プロフィール〉
小嵜 秀信氏
 Eコマース初期より大手企業のECサイト・通販運営に従事。その後、EC事業会社、ECシステム会社の経営を経て、中国国内にて輸入品スーパー事業と中国越境EC事業などを手掛ける。また、日本初のEコマース学術研究機関である東海大学総合社会科学研究所Eコマースユニットにおいて、客員准教授として学術研究・教育にも従事。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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