今回はシカゴ開催のECイベント「IRCE」内でも共有されたたEC成長モデル事例についてお伝えします。
米国のECの中心がアマゾンであることは間違いない状況です。ただ、メーカー直販モデル「DtoC(Direct to Consumer)」は、アマゾンとは一線を画しながら成長しています。メーカー企業がECを中心にブランド力を高めて、実店舗でも接点を増やすことに成功しています。
約5年前の「IRCE」では「オムニチャネル」が注目ワードでした。米国の百貨店や大手スーパーが、実店舗とECを一体化して、顧客を囲い込むという戦略や事例が共有されていました。しかし、今回のイベントでは「オムニチャネル」というワードはほとんど消えています。
米国ではすでに「オムニチャネル」が普通の取り組みとして行われていることや、アマゾンの影響もあり「オムニチャネル」=「ECの成長」ではなくなっている状況です。
■拡散される仕掛け
「DtoC」のショールーム型の実店舗事例は、ニューヨークに集中していましたので現地で確認してきました。「IRCE」でも紹介されていた事例として眼鏡専門の「Warby Parker(ワービー・パーカー)」やコンフォートシューズの「allbirds(オールバーズ)」を含めて約20店舗を視察しました。
各店の特徴は、(1)二等立地(2)商品の絞り込み(3)コンセプトが明確(4)サービス・価格の絞り込み(5)顧客とのコミュニケーション・体験の場─があります。
「DtoC」モデルで成長する企業は、自社ECサイトを中心にソーシャルも最大活用しながらブランド認知を広げています。スマホが中心となっていることもあり、テーマや商品を絞り込んだ方が情報を確認しやすく、拡散されやすいということもあるかと思います。
実際にニューヨークの「ワービー・パーカー」の店内のテーマは「図書館」であり、思わず写真を撮ってソーシャルで誰かに伝えたくなる演出や、手厚いサービスが提供されていました。
新興のコスメブランドとして「DtoCモデル」の先進事例として紹介される「Glossier(グロッシアー)」のショップに行くと、入口は1階のエレベータのみで、その前に行列ができ、5階のショップに入った瞬間に、店内は若い女性で混み合っている状況でした。これもショップでの感動体験の口コミや拡散を狙っているように感じました。
■日本流のDtoCとは
米国で先行する「DtoC」モデルですが、日本市場でもメーカーがECを中心とした独自ブランドを直接販売する動きが活発になってきています。
日本では、新しいブランドのファンを自社ECサイトで増やしたり、すぐに売り上げを伸ばしたりするのが難しいこともあり、ECでシェアの高い楽天市場やアマゾンにおいて「DtoC」を行う動きが主流になりそうです。
モール活用と並行して自社ECサイトや主要都市に実店舗を持つ日本流「DtoCモデル」の動きに注目です。(おわり)
〈執筆者略歴〉 いつも.上席コンサルタント 高木修氏
いつも.のECコンサルティングノウハウを開発する部門の責任者を行いながら大手企業のEC事業拡大のコンサルティング業務も手掛けている。米国在住経験もあり、海外ECモデルの変遷にも精通し、6年連続で米国視察を行い、米国の小売りおよびEコマースの最新動向も収集・整理して日本での活用を提案している。
【〈速報「米国EC視察」〉IRCE参加レポート】〈後編〉 オムニは消え「DtoC」が主流に
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