最近EC企業担当者から、「ECに関連した、多くのテクノロジーをうまく活用できない」という声をよく耳にします。魅力的なスマホアプリやAIを組み込んだウェブ接客ツールなど、テクノロジーは充分出そろっていますが、こうしたツールは勝手に助けてくれるものではありません。自社ブランドの課題に則したツールを選択して、こまめに運用していくことが必要です。本連載では、それぞれの企業に合った、ツールの選び方や活用の仕方について、解説します。
■ブランドに沿った戦略の構築を
ECに関する技術が進歩して、魅力的なツールが多数提供されています。ツールの提供企業から営業を受けると、ツールの機能に魅了されて導入してしまい、結果的にうまく運用できなかった、ということがよく起こります。私もEC運用でこうした失敗を経験したことがあります。
ZOZOTOWNの自動採寸システム「ZOZOSUITS(ゾゾスーツ)」やBEAMS(ビームス)の自社メディアプラットフォーム、無印良品のECアプリ「MUJIpassport(無地パスポート)」など、テクノロジーをうまく活用している大手企業もあります。ただし、大手の成功事例を形式的に真似て、同じような仕組みを作りたいと考えていても、自社のブランドに適していなければ、失敗するケースもあります。
まずは、企業の経営者が企業やブランドの方向性をきちんと明確にし、EC担当者がブランドの方向性に合った戦略を構築する必要があります。少なくとも経営者がツールの導入を決定すべきではないと考えます。経営者はあくまで企業の方向性を決定し、EC担当者が方向性に沿ったテクノロジーの活用方法を考えるべきです。
■日ごろから課題をストック
方向性や戦略が決まり、次に具体的にどんなツールを選ぶかをということになります。担当者は、常に商売に向き合って、日ごろからどういった課題があるかを頭の中に蓄えておくことが必要です。自社ECの担当者は日々、ECサイトのサイトへの流入数、顧客のサイト内行動といった、さまざまなデータを見ているでしょう。そのようなデータとお客さまの声、自分たちの意志とのギャップから課題を明確にしておくと、新たなツールに出会った時に結びつくときがあります。
例えば、アパレルECに関しては、スマホから流入するユーザーがほとんどです。スマホサイトに導入するウェブ接客ツール一つをとっても、選び方に工夫があります。販促のために頻繁にバナーを変えてみても、画面が小さく、すぐにスクロールできるので無視されがちです。「どういった運用が適しているのか」や、「どういったセグメントやタイミングで表示するか」といった検討が重要になります。
(つづく)
《プロフィール》
ビジョナリーホールディングス デジタルエクスペリエンス事業本部長
川添・隆(かわぞえ・たかし)
アパレル関連企業2社を経験後、前職ではEC事業責任者として売上倍増に寄与した。2013年よりメガネスーパー、2017年11月よりビジョナリーホールディングスで現職。ECを4年で3.4倍に拡大。オムニチャネルに取り組む傍ら、コンサルも手掛け、EC関連のセミナーにも多数登壇している。
《新連載》【「踊らされない!戦略的自社ECのTEC活用術」】第一回 方向性に合ったツールの採用を
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