音声検索の利用率が高まる中、次に注目されそうなのが「強調スニペット」だ。強調スニペットとは、グーグル検索をした際に、従来の自然検索結果の上に表示される説明枠のこと(別掲参照)。音声検索に対するグーグル音声回答は、強調スニペットから引用されるケースが多く、米国では強調スニペットに自社のコンテンツをいかに表示させるかに取り組む事業者が増えているという。従来のSEO対策に加え、日本のEC事業者も音声検索や強調スニペットを意識した取り組みをすべきとする識者もいる。
米国では、音声検索の利用率が高まっているという。アイレップの渡辺隆広SEM総合研究所所長は「米国で音声検索が使われている割合は全検索の約20%。20年には50%に達するとみる専門家もいる」と話す。
音声検索の利用者は検索回答を音声で確認するケースが多い。このため米国では、音声回答の引用元である強調スニペットの重要性に特に注目が集まっているようだ。
サイト価値向上を支援するクロスフィニティ(本社東京都、加藤毅之社長)の松野亘氏は「強調スニペットは検索0位ともいえるもの。これを見て検索ユーザーのニーズが満たされてしまうというケースも多い。強調スニペットの登場で、検索表示の1位をとっても、従来のような効果が見込めなくなってきたと話す事業者もいる」と話す。
さらに、松野氏は「強調スニペットに載っていることが、ある意味でグーグルによる検索回答ともいえる。そこに載らないと、事業者は音声検索のユーザーになかなかアプローチできない。強調スニペットの影響は今後ますます大きくなる」と予想する。
強調スニペットに載るにはどうすればよいのか。
松野氏は、掲載条件の一つとして「ウィキペディア、ユーチューブ、ヤフー知恵袋など、信頼感のあるサイトや、特定のワードで5位以内に入るようなサイトが載りやすい」と分析している。
同社の調査によると、文章の中に「とは」「料金」「価格」「郵便番号」などのワードを載せることが強調スニペットに表示される上で有効になるという。
新しいサイトや小規模のサイトでも、従来通りのSEO対策をしっかりと行っていれば、強調スニペットに表示される可能性はあるという。「〇〇とは」「〇〇ってなに」という話し言葉による検索の対策を工夫することが重要としている。
ただ、「強調スニペットには『情報型』のコンテンツが引用されるケースが多く、ネット通販事業者が得意とする『取引型』のコンテンツとは相性が良くない」(松野氏)と言う。対策をするのであれば、売るためのコンテンツではなく、〝知りたいという欲求〟に応えるようなコンテンツを目指すべきとしている。
SEO対策支援を手掛けるディテイルクラウドクリエイティブ(本社東京都)の南雲宏明社長は、強調スニペット対策について商品やサービスを取り巻く用語類について解説を網羅するようなサイト構成にすることを勧めている。「オウンドメディアなどのようにしっかりとした、コンテンツが充実しているページであることが望まれる」と話している。
ガシー・レンカー・ジャパン(現ザ・プロアクティブカンパニー)やマードゥレクスの取締役を歴任したUNCOVERTRUTH(本社東京都、石川敬三社長)の藤原尚也CCO(チーフコンテンツオフィサー)は、音声認識の普及や、強調スニペットの登場により、従来の検索行為が減ると予想。現にグーグルやヤフーでは、検索窓の優位性が低下しているという。
「そうなるとECでは公式サイトの概念がなくなり、個々のコンテンツが重要性を増してくる。音声検索で取り上げられるにはコンテンツ作りをさらに強化していく必要がある」(藤原氏)と話す。
従来とは異なる検索対策を求められる時代が来るのでは、といずれの識者も予想している。
※「強調スニペット」とは
グーグルの自然検索結果の上に表示される説明枠。「テキスト」「箇条書き」「表」「動画」などの種類があり、信頼性の高いサイトから引用されやすい傾向にある。グーグルの音声検索に対する回答として読み上げられるケースも多い。「スニペット」とは「切れ端」などの意。
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