【人気ネットショップの裏方事情】連載第72回 スマホEC市場に乗り遅れるな

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加藤 敏明氏

加藤 敏明氏

 2014年は、物流経費の値上げがEC業界にとって大きな話題となりました。北国からの贈り物は冷凍食品を中心に取り扱っており、荷姿が大きな商品がほとんどなので、送料のコストアップの影響を大きく受けるため、商品ラインアップの見直し、物流拠点の新設など、さまざまな取り組みを行っています。
 楽天が展開する「あす楽」や、アマゾンプライム、ネットスーパーに代表されるように、ECに即時性のニーズが高まっています。今後も短期間で消費者に商品を届けるニーズが高まることを考えれば、ネットショップは、各地域に拠点を設ける必要があると考えます。将来的には、アマゾンのようにあらゆる場所に拠点を増やしていく必要があるのかもしれません。
 当社は繁忙期が冬なので、夏と冬とでは物流のオペレーションが異なっています。お客さまにメッセージを書くといったアナログな部分もあるため、その時にあった対応をしていかなければなりません。
 当社では、物流拠点を北海道と中部の2カ所に設けていましたが、2014年末から、試験的に東北に新たな物流拠点を設置しました。北海道が本社で、東北が空白地域になっていたため、設置を決めました。今までよりリードタイムを短縮することで、お客さまにメリットを感じてもらえると考えました。
 2015年はスマホEC市場がさらに大きくなると予測されます。しかし、今だに、スマホに最適化されたサイトを開設していないところも見受けられます。こうしたショップは、今後生き残っていくことがよりいっそう困難になっていくのではないだろうと思います。
 ECは変化が早い業界ですので、過去の事例で考えると、モバイルECで一時代を築いた企業は、スマホの流れに乗れずに成長していないところも見受けられます。常にその時代の覇者を目指していくことで、やっと生き残れる時代になってきたのではないだろうかと思います。
 10年先のことは分かりませんが、3年後のネットショップを考えれば、スマホが中心になることが容易に予想できます。こうした時代のニーズを積極的に把握して最新の技術を取り込んでいかなければ、ネットショップ運営を継続していくことは難しいと思います。
 また、時代の流れということで考えると、大手小売りや百貨店が「オムニチャネル」と称して、実店舗とネットショップの集客戦略を多角的に推し進め、一部の企業ではその相乗効果を実証している事例もあります。もしかしたら、あと5年もすれば「ネットショップ」という言葉そのものがなくなってしまうかもしれません。
 加速度的に変化する時代のニーズを的確に捉えつつ、経営者が意思決定していくことがますます重要になってきそうです。その際に、社員が思い切って働けるような仕組みづくり、環境づくりも合わせて取り組んでいくことが重要です。(月1回掲載)


〈筆者プロフィール〉
加藤 敏明(かとう・としあき)氏
 65年北海道厚岸生まれ。東京都立大学卒業後、建築事務所に勤務。ネットショップ「北国からの贈り物」を98年6月にオープン。楽天市場ショップオブザイヤー・ベスト店長賞を4度受賞。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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