【インタビュー】〈企業買収で事業拡大〉イーブックイニシアティブジャパン 小出斉社長/海外にも電子書籍を配信

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小出斉社長

小出斉社長

電子書籍の配信を手掛けるイーブックイニシアティブジャパン(本社東京都、小出斉社長)が3月12日に発表した15年1月期の連結業績によると、売上高は前期比23・4%増の51億2900万円だった。同日に書籍通販を手掛けるブークスの子会社化を発表。2月には、中国における電子書籍配信の合弁会社設立を明らかにした。中国市場に参入し、国内外で電子書籍の販売機会拡大を図っている。小出社長に海外向け配信事業と国内電子書籍市場の展望を聞いた。

海賊版との競争

 ─中国に合弁会社を設立した狙いは。
 中国で許可なく流通している海賊版電子書籍を見ると、日本の漫画に対する親和性や関心が非常に高く、潜在顧客が見込めることの裏付けだと考えています。13億人を超える人口に加え、所得レベルが日本の平均を上回る富裕層も多く、有望な市場とみています。
 紙の書籍は中国当局の検閲といった要因から、お客さまが満足できるような量が市場に出回らなかったことがありました。電子書籍という方法で流通と取り扱う作品を確保し、潜在顧客のニーズを満たして市場を開拓できると判断しました。
 ─中国市場では海賊版との競争になると考えていますか。
 その通りです。海賊版は作品数、翻訳の質といった面で高い水準にあります。作品のファンが自分の好みで翻訳などを行っているためです。
 企業が電子書籍を販売する場合は、翻訳の質に加え、権利関係の調整でも高いハードルがあります。海賊版を利用している人の中には、作品を読みたいが流通していないので仕方なく利用しているという方もいます。正規品の配信によって、仕方なく海賊版を使っている層から顧客を獲得できる体制を整えていきます。
 ─どのような点で電子書籍事業の成算を見込んでいますか。
 集客や宣伝に対しては、中国のソーシャルメディア「ウェイボー」の日本向け総代理店を務めるファインドジャパンを子会社化しました。同社のノウハウを生かしたソーシャルメディアのほか、現地の有力なネットメディアなどを利用したプロモーションを検討しています。
 国内の権利調整では、1000を超える出版社や権利者との信頼関係を生かしていきたい。日本における配信事業で築いた信頼をもとに、許諾獲得を進めていきます。
 中国市場の権利調整は、現地の出版社と協力して対応します。上海世紀出版集団という有力な出版社グループの主要会社、上海故事会文化伝媒有限公司と資本業務提携を結びました。
 将来的には中国以外の国でも電子書籍の展開と設備投資を進めていく計画です。

(続きは日本ネット経済新聞 3月26日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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