【パワープランニング〈「腕時計本舗」〉 塩野和常社長】死滅する”小売りEC”から進化

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 腕時計のECを運営するパワープランニング(本社大阪府、塩野和常社長)が運営する「腕時計本舗」は、楽天市場の「ショップ・オブ・ザ・イヤー(SOY)2017」を受賞した有力店舗だ。にもかかわらず同社の塩野社長は「ECの小売業は今後10年で死滅する」と話す。そうした危機感の下、同社では、「Amazonにできない付加価値の提供」に取り組み成果を上げている。メーカーとのコラボレーションの中でブランドを育てていく事業にも取り組んでおり、ノウハウを構築している。「薄利多売は行わない」という一貫した戦略の下、”単なる小売りEC”からの進化を成功裏に進めている同社の塩野社長に話を聞いた。

■高い粗利率を確保

 ─SOYの受賞要因は、腕時計のEC事業の業績好調によるものですか。

 SOYの受賞は、業績だけでなく、さまざまな取り組みが評価された結果だと考えています。
 当社は、売れ筋商品を安く仕入れて安く売る、いわゆる「薄利多売」の販売を基本的に行いません。メーカーとタッグを組んで、一から商品そのものをブランディングするという「地道な商品訴求」をテーマに掲げ、事業を行っています。数年前からこの取り組みに注力してきましたが、ようやく軌道に乗り始めた感触です。
 この取り組みの一環として、14年ごろからは、売り上げを積極的に伸ばすことを意図的に止め、利益を重視する戦略をとってきました。現在は非常に高い水準の粗利率を確保できています。この取り組みで重要なのは、「価格を崩さず、安売りはしない」という意思決定です。
 当社は、メーカーから商品を仕入れて販売する、いわゆる小売りの形態で事業を運営しています。ただ、今はメーカーが直販するのが当たり前の時代です。私は、今後10年で、ECの小売業は死滅すると考えています。ECの小売業は、他の業態にチェンジするか、小売業からさらに進化する必要があります。
 当社は腕時計屋ではありません。「複数のサイトを運営したい」という人材が集まるIT企業だと捉えています。ですから昨年からは、メーカーのブランドのEC運営代行も行っています。
 当社には、これまで、「腕時計本舗」や、ペット用品を扱う「モコペット」で、200万人以上の顧客に商品を販売してきた実績とノウハウがあります。「腕時計本舗」は楽天市場、ヤフー、Amazonをはじめ計8店舗展開していますが、他社よりもさらに効率化が図れるよう、さまざまなツールを使っています。例えば、商品データの作成ツールから出品ツール、各モールの価格データを常時分析するツール、商品の購買における最低利益を設定すれば、自動的に価格が更新されるシステムまでを構築しています。
 こうした強みを持っているので、メーカーから、商品の販売だけでなく、自社ECサイトの運営を委託されることも多くなってきました。当社に任せていただければ、メーカーが自社の中でECの部署を内製化するよりも効率的です。メーカーが実際に利益が取れるような形でEC事業を支援しています。

 ─小売業もメーカーも、ECで生き残るためにはどのようなことをするべきだと考えますか。

 まずは「Amazonができないこと、やらないこと」を考えるべきです。そして、「安売りで、5年先まで他社に勝つことは本当にできるのか?」を真剣に考えるべきでしょう。

(続きは、「日本ネット経済新聞」6月21日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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