「特別インタビュー」【楽天 執行役員ECカンパニーCCO&ディレクター 野原彰人氏】20周年、より使いやすく訪れたいサイトに進化

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 「楽天市場」は今年、開設20周年を迎える。20年の間に、新しい技術やデバイスなどが出現し、ECを取り巻く環境は次々と変化している。それに合わせて「楽天市場」も改善を重ねてきた。店舗の商売に自由を持たせている「楽天市場」のよさを生かしつつ、ユーザーにとってより使いやすいサイトになるための進化が続く。17年は決済や検索回りなど、ユーザーから特に要望の多い改善点に取り組み、そのための店舗向けのサポートも充実させていく。野原彰人執行役員ECカンパニーCCO&ディレクターに今年の強化ポイントと、20周年の抱負を聞いた。


■店舗向け決済支援を開始

 ーーー20周年を迎える現在の「楽天市場」をどう捉えていますか。

 今までの「楽天市場」は店舗のページに個性が表れているように、「自由に商売してください」というスタンスでした。それにより、ここまで成長してきたマーケットプレイスであり、各店舗が独自の進化を遂げています。これは「楽天市場」のよさでもあり、店舗が商売を頑張れる一番のドライバーにもなってきました。一方で、ユーザーから見たときの使いにくさ、見えにくさ、検索のしにくさがありました。これらの部分を解決しなければいけないときにきていると感じています。自由な店づくりを「楽天市場」の持ち味としつつ、一定の部分では統一的なルールも必要です。17年は店舗の皆さまにその理解を深めていただく努力と、ユーザーにとって使いやすいマーケットプレイスとしていくことに力を入れていきます。

 ーーー具体的に、今年はどういった取り組みをしていきますか。

 まず、4月から出店者向けの新決済プラットフォーム「楽天ペイ(楽天市場店舗向けペイメントサービス)」を開始し、決済関連の使いやすさを実現していきます。現在はクレジットカード決済を含め、3種類までの決済方法を店舗が選べるようになっています。4月から電子マネー決済、金融機関利用決済、コンビニ決済など8種類の決済方法を全店舗が統一して導入するよう順次進めていきます。利用したい決済手段に対応していないという理由で離脱するユーザーは少なからずいました。どこの店舗に行っても同じ決済方法に対応しており、利用したい決済手段を選べるようにするとユーザーのストレスは大幅に軽減でき、店舗の売り上げアップにつながると確信しています。

 ーーー対応すべき決済手段が増えると、店舗の作業負担も増えませんか。

 決済関連の業務が増えないように楽天が決済手続きや振り込み代金の照合などの業務を代行していきます。これにより、店舗は商品開発や販促、ページ制作などの業務に割ける時間が増えると思います。また、決済手段が増えても、「楽天ペイ」で全ての決済手段の締め日と入金日を統一していきます。店舗の声に傾聴する施策も強化している中で、「入金サイクルを短縮してほしい」「出店手数料など楽天に支払う料金と、楽天市場で売り上げた入金を相殺して取引をまとめてほしい」などの要望が寄せられており、これらにも対応していきます。

■改善点分析ツールを活用

 ーーーそのほかの取り組みは。

 1月末日から、家電や書籍などの一部の商品で、登録の際にJANコードを含む「カタログID」の入力を必須としていきます。これはユーザーが求める商品を探しやすくするためです。例えば、買いたいカメラがあった場合、メーカー名と商品名を検索窓に入れても、これまでは付属品なども検索結果に出てしまっていました。カメラ本体を買いたいユーザーにとって買いやすくする仕掛けを店舗の皆さまにお願いしています。家電や書籍などのジャンルでは、カタログIDの入力を必須とする前から9割近くの商品にIDを入れていただいています。「スーパーポイントアッププログラム(SPU)」などの施策が奏功して「楽天市場」に来訪しても、探したい商品が見つからずに残念な顧客体験をすると来てくれなくなります。使いやすいサイトに改善して、ユーザーの来訪を増やしていきます。

 ーーー時代とともに、消費者が使いたいと思うサイトや買ってもらうための工夫は変化しています。

 その通りだと思います。商品名の事例を一つ取っても、その傾向はあります。10~20年前は検索に引っかかることが店舗の売り上げに直結していたので、商品名にあらゆる関連ワードを並べて長くすることも当然でしたし、ECコンサルタント(ECC)もそれを薦めていた時代もありました。今ではユーザーの求める検索結果への期待はとても高まっており、デバイスもPCより画面が小さいスマホが台頭しています。店舗の自由と個性を尊重する姿勢はそのままに、店舗の皆さまと丁寧なコミュニケーションを取りながら「楽天市場」の店舗全体の利益を高めていくための取り組みには協力をお願いしていきたいと思っています。

 ーーー店舗レビューの評価が向上していると聞きます。

 店舗にとって、自社の強みと弱みは、分かるようで分からない部分もあります。それを解決するために16年10月に「Rカルテ」の提供も開始しました。「Rカルテ」は、商品レビュー、店舗都合のキャンセル、指定日通りの発送、送料設定・表示の分かりやすさなどの10項目を数値で評価して可視化したものです。店舗運営システム「RMS」に貯まったデータとユーザーレビューを元に数値化しており、「RMS」でいつでも見られるようにしています。これまでもECCから各店舗に改善点や強化すべき点のアドバイスをしてきましたが、客観的な数字として見ることで、改善点が意識しやすくなりました。

 ーーー強化ポイントが分かった後、改善するための支援は。

 「楽天大学RUx(アールユーエックス)」で、例えば「配送のときに気を付けること」など、課題解決が必要な分野に対するビデオが見られます。店舗レビューの向上は各店舗による改善の努力のたまものです。「Rカルテ」や「楽天大学」のコンテンツのように、改善活動を支援する仕組み作りは今後も積極的に続けていきたいと思います。

 ーーー「楽天市場」20周年の抱負を聞かせてください。

 「楽天市場」の主役は店舗です。楽天は黒子となり、プラットフォーマーとして集客をして、UI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)の改善に努めていくことが仕事です。そのために、店舗の皆さまから理解・協力を得られるよう、まだまだ努力していく必要があると思っています。EC市場はこれからも拡大すると思いますし、どの事業者にもチャンスが広がっているはずです。「楽天市場」が20年間積み重ねてきた改善活動は今後もとどまることはありません。環境の変化に柔軟に対応し、店舗向けのサポートも充実させていきたいと考えています。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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