楽天が14年6月に開始したキュレーションサービス「ROOM(ルーム)」の利用が活発化している。気に入った商品についてユーザーが投稿し、その投稿を見た別のユーザーが購入すると、購入額の5%相当の楽天スーパーポイントが付与される。「ROOM」は投稿者の世界観や好みがそのまま反映されるため、楽天市場の中から欲しい商品を探すよりもより好みにマッチした商品に出会いやすいと好評だ。出店者は「ROOM」の店舗アカウントを作ることもでき、商品の魅力を伝えたりマーケティングに「ROOM」を活用する事例も出始めている。出店者にとっての「ROOM」の活用方法について、楽天市場事業ROOMグループの山下純一マネージャーに聞いた。
■影響の大きいユーザーを拡大
ーー楽天が「ROOM」を立ち上げた理由は。
楽天市場は「Shopping is Entertainment」をコンセプトとしており、今までもさまざまな検索機能やランキング、レコメンドを用意してきた。しかし、商品数が多いがゆえに、欲しいものが見つけにくいという声もあった。そこで、商品との出会い方として人がお薦めする商品が見られるキュレーションサービス「ROOM」を作った。「欲しい!に出会える。キュレーションメディア」が「ROOM」のコンセプトとなる。
ーーさまざまなキュレーションサービスがあるが「ROOM」の特徴は。
楽天市場をよく使っているユーザーがキュレーターになっているので、楽天市場自体を熟知しており、見るべきポイントもよく知っているため、お薦めの説得力がある。現在のユーザー層の約7割が女性で、20~30代がボリューム層となっている。このため、現在のところインテリア・雑貨、レディースファッション、キッチン雑貨、コスメなどが多く載っている。モバイルの利用率は約8割で、その理由としてはブログを書くより圧倒的に短時間で投稿できるので、ちょっとした空き時間にも利用できる利便性が考えられる。
ーーどういう風に普及に力を入れているのか。
楽天市場のサイトのバナーだけでなく、楽天が運営する情報発信サイト「Rmagazine(アールマガジン)」からも導線を作って、楽天としても強力にプッシュしている。実際に楽天市場で購入した商品を自分で撮影して良質な投稿をしてくれる人を支援するため、今月からインフルエンサー(購買意欲など消費者に大きな影響を与える人)100人の募集を開始し、毎月「楽天スーパーポイント」を1万ポイント提供する取り組みも始めた。このほか、インスタグラムとも相性のいいサービスなので、インスタグラムで一定規模のフォロワー数があり、インスタグラムでシェアリングしてしっかり発信してくれるユーザーに毎月3万ポイント提供する取り組みも随時行っている。
ーーどういうユーザーや投稿内容が「ROOM」のフォロワー数を増やしているか。
写真にこだわっていて、コメントもしっかり入れるとフォロワー数が増える傾向にある。楽天市場の商品画像のまま投稿することもできるが、商品を実際に使っているところを撮影するなど、写真に工夫するといいようだ。投稿する商品もモノトーン系のインテリアや写真映えのするスイーツで統一して投稿するユーザーや、雑誌のようにコメントを書いているユーザーもフォロワー数を集めている。
■独自の写真、ストーリーで紹介
ーー出店者が「ROOM」の店舗アカウントを作る事例も増えているようだ。
「ROOM」のユーザーは楽天市場との接触頻度が上がるので、楽天市場での購買頻度が高いことが分かっている。担当のECコンサルタントに連絡すれば、専用の申し込みフォームから無料で店舗アカウントが作れる。これまではユーザー数の拡大を図ってきたが、今は店舗アカウント数を拡大させるフェーズに来ている。
ーーー「ROOM」からの訴求はメルマガや広告とどのような違いがあるか。
「ROOM」は好みがはっきりするので、転換率に大きな差が出る。メルマガからのサイト来訪者と、「ROOM」からの来訪者を比べると、「ROOM」は転換率が約2倍に高まる傾向にある。また、広告ではないため、費用を掛けずに露出することができ、拡散すれば相当な露出効果が得られる。ネットプロモータースコア(NPS=ロイヤルティーを数値化した指標)が最近の重要な経営指標の一つと言われるが、NPSの向上を意識している出店者が「ROOM」を積極的に活用している。
このほか、「ROOM」はユーザーとのコミュニケーションが取れる点も大きい。メルマガは情報が確実に届きやすいが、基本的には一方通行になりがち。ユーザーからの声が寄せられるレビューも、買った人という条件が付いてしまう。「ROOM」はユーザーのコメントや「いいね」などの反応が見られることがメリットだ。こういったユーザーの声をマーケティングに生かしている出店者も表れている。
119643マーケティングや商品の訴求にうまく活用している事例は。
マーケティングでは例えば、商品画像のパターンならどちらの方がユーザーの反応が多くなるかを見たり、「ROOM」の反応を見て集中的に仕入れる商品を見極めることもできる。また、「ROOM」は商品単体で紹介するだけでなく、「コレクション」といってコーディネートしたファッションや、複数の家具やインテリアを組み合わせて写真で紹介することもできる。「ROOM」で紹介したときのファッションコーディネートを実際に楽天市場のサイトで紹介するときの参考にしている店舗もある。「コレクション」の機能は特にファッションやインテリアで強みを発揮している。楽天市場ではジャンルを越えて商品を紹介することが難しいが、「ROOM」では家具、インテリア、食器をセッティングした写真を掲載して、店舗の全体像や魅力をトータルで表現することができ、複数商品の購入にもつなげることができる。
ーー店舗が「ROOM」を運営するコツは。
「ROOM」は楽天市場のランキングに載らないような掘り出し物に光が当てられる場なので、ニッチ商品のアピールにも活用できる。例え取扱商品数が少なくても、単品と3個セットを別々に掲載できるので、紹介できる幅に限りはない。楽天市場の商品写真には使っていないような魚介類を獲ったときの写真や農産物を収穫したときに写真なども使って、ストーリーと一緒に紹介してほしい。型番商品も使用中の写真などを活用してオリジナリティーを出せばユーザーの興味を引くことができる。店舗を越えて商品を紹介できるので、多店舗展開をする場合も別店舗の商品も紹介することができる。ユーザーが魅力的な店舗と出会えるサービスとして、「ROOM」の成長を加速させたい。
【楽天 楽天市場事業 ROOMグループ 山下純一マネージャー】「ROOM」をマーケや店舗の魅力訴求に活用
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