【Eコマース業界地図〈物流編〉】

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 EC事業者の「物流」に関する支援サービスを、ECのネットメディア「Eコマースコンバージョンラボ(eccLab)」と共同でまとめた。サービスマップには物流代行サービスに加えて、宅配サービスや倉庫管理システム(WMS)もカテゴリー別に収録。宅配便運賃の値上げが進む中、頼りになる支援サービスを紹介している。

《EC物流正念場の年末配送セール対応、おせちも課題》
 大手宅配便事業者による総量規制が思惑通り進まない状況下、早くも年末繁忙期におけるEC荷物の配送について懸念する見方が顕在化している。物流業界にとって12月はもともと、歳暮需要で繁忙期を迎えるが、EC業界は大型セールの実施や、おせちへの需要が年々増えていることから、遅配や未達といった事態が起こらないか懸念されている。宅配便料金の値上げや総量規制と共に、年末配送への対応はEC事業者の頭を悩ますことになりそうだ。


■受け皿がない

 荷物の増加と現場での働き方改革をきっかけに、ヤマト運輸が総量規制ならびに「宅急便」の基本運賃値上げを表明したのは今年4月。実はヤマトが正式に運賃値上げを公表する以前から、一部の3PL事業者には佐川急便から宅配便の料金値上げに関する要請が寄せられていた。
 世間ではヤマトの物流現場や労組による発言が話題になっていた時期だ。当該3PL事業者の担当者は、佐川の要請について「ヤマトの件に端を発した便乗値上げだろう」と高をくくっていた。
 それ以前の交渉は運賃の値上げが話題となっても、佐川かヤマトのどちらかが何らかの対応策を示してきたため、特に大きな問題にはならなかった。しかし、今春の交渉は佐川、ヤマトともかなり強気だったという。
 結局は、ヤマトへの委託分を一部、日本郵便に切り替え、ヤマトと佐川には運賃の値上げと総量規制の条件に応じることで再契約に至った。ただ現在は、日本郵便への切り替え自体が難しくなっているという。
 倉庫会社の現場に詳しい、ロジザードの亀田尚克執行役員が解説する。「ヤマトさんが受けない荷物を、佐川さんも取りに行っていない。つまり、ヤマトさんに切られた荷物は郵政さんが受けているが、その影響で郵政さんのキャパシティーが厳しくなっている」というのだ。
 日本郵便はこうした商談を確実に拾っているようだが、その後の契約がまとまらず、受け皿がないという。日本郵便が受けられない荷物は誰が引き受けるのか。
 アマゾンの配送委託先に期待するのは、アドレス通商の寺戸毅取締役だ。「アマゾンは徐々に、配送委託先であるデリバリープロバイダに切り替えている。やはりヤマトオンリーだとリスクがあるからだ。デリバリープロバイダもアマゾンの荷物で経験を積みながら力がついてくれば、第4の受け皿になる可能性がある」と予想する。

■遅配への準備も

 寺田取締役が当面の課題と捉えているのが、年末繁忙期における配送への対応だ。配送委託先からは「前年実績までの出荷数までしか受けられない」(寺田取締役)と打診されている。
 しかし、宅配便の取り扱い個数は、宅配便事業者が総量規制を表明しても、なかなか減っていないのが実情となっている。
 ヤマト運輸の持ち株会社であるヤマトホールディングスは期初、今期の「宅急便」取扱数を、前期実績より8000万個下回ると予想していた。
 今期第1四半期の決算説明会では、前期比約3600万個の減少に修正したが、9月6日に発表した今期5カ月間(4~8月)の累計取扱数は、前年同期比4・2%増となっている。
 佐川急便の「飛脚宅配便」の取り扱い推移は不明だが、日本郵便の「ゆうパック」は今期4カ月間(4~7月)の累計で、前年同期比22・1%増の推移だ。
 宅配便荷物の増加傾向が依然予想される状況で迎える年末配送。EC業界では毎年恒例となっている楽天の「スーパーセール」や、アマゾンの「サイバーマンデー」といったセールの実施が予想されるとともに、おせち通販の発送もピークを迎える。
 実は昨年末も、大手配送業者の遅配で、一部通販事業者は対応に追われたが、今年も「遅配への対応を準備すべき」と指摘するのは、イー・ロジットの角井亮一CEOだ。遅配や未達といったトラブルは、EC事業者が原因でなくても、顧客は販売元へクレームを寄せてくるからだ。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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