中国政府は19年1月1日、「中国電子商取引法(中国EC法)」を施行した。EC事業者やECモール運営者を対象に、営業許可の取得を義務付けた。課税を逃れていたインバウンドバイヤーが、日本国内の量販店や免税品店での購入をしなくなるケースが急増した。日本の美容機器や化粧品メーカーの国内店頭売り上げが軒並み減少した。一方で、日本から中国に向けた越境ECの需要はむしろ高まっているようだ。
中国EC法の施行以後、インバウンド需要が減少した。MTGのように、インバウンド需要の減少が大幅な減収につながるケースもある。ただ、中国越境ECプラットフォーム「天猫国際(T―モールグローバル)」などの市場分析を行うNint(ニント、本社東京都)によると、「中国向けビジネスを行う国内企業を全体的に見ると、基本的には増収する企業が多い」(吉野順子社長)と言う。
「中国EC法は、越境ECの正規ルートの販売にとっては、大きな追い風になっている」(同)としている。CtoCのタオバオでの流通をみると、「年初に大きく下がったが、それ以降盛り返し、一定規模の流通がある」(同)と言う。
越境ECの運営代行などを手掛けるunbot(アンボット、本社東京都)によると、「中国でEC事業をしていても、中国EC法の影響を感じることは少ない。ソーシャルバイヤーも引き続き存在している」(広報)と言う。ただ、「施行後は税関のチェックが厳しくなるなどした」(同)と言う。「具体的なガイドラインの制定もなく、今後の法律の運用が不透明だ」(同)とも話している。
【2019年 EC業界重大ニュース】 中国EC法が1月に施行/中国人需要減退でメーカー翻弄
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