ZOZO(ゾゾ)が運営するファッションECモール「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」は、18年に新施策を相次いで投入した。新規にスタートした広告サービスやセール企画は出店者から好評を得ている。新たな施策やブランドの誘致により、プロパー比率が上昇し、顧客単価の下げ幅は緩やかになっている。話題を集めるゾゾの18年の新施策や19年の展望について、EC事業本部の松田健ディレクター聞いた。
─18年に開始した新たな販促施策の反響は。
今期(19年3月期)は当社として初めて出した3カ年計画の1年目だった。21年3月期の年間商品取扱高の目標は、ZOZOグループ全体で7000億円、「ゾゾタウン」単体で5000億円という大きな目標に向けて最初の一歩を踏み出した。新しい施策を打ち出し、ショップが使える手数を可能な限り増やしている。これまで販促の中心だった日替わりのブランドクーポンは分かりやすい価格訴求の手法だったが、18年9月に広告サービス「ZOZOAD(ゾゾアド)」を開始し、価格訴求ではない手法も提供している。他のモールの広告よりも費用対効果が高いとショップには好評だ。
「あなただけのタイムセール」という取り組みも今期から開始した。お客さまがお気に入りに登録したアイテムやカートに入れたものの購入しなかったアイテムを、24時間限定で10%OFFにて購入できるタイムセールを実施するというもの。10%OFFなので価格訴求にはなるが、クーポンのようにお客さま全員に提供し、多くの新規顧客獲得を目指す施策とは異なり、「あなただけのタイムセール」はクローズドに提供し、何もしなければ買わなかったお客さまに購入を促すことで売り上げの純増を図る施策だ。
プロパーでの消化促進のためのデータ分析も、引き続き積極的に行っている。プロパー消化期の需要予測データを品番単位で用意し、営業メンバーとの連携を強化。ショップへの情報提供がスムーズに行われるようになり、売り上げ上位品番の欠品が前年よりも減少した。プロパーの売り上げ比率を伸ばしている。
■PBは顧客拡大に寄与
─「ZOZOWEEK(ゾゾウィーク)」というセールを中心とした販促企画も今期スタートした。
これまで大型のセール企画は、夏と冬だけだった。そのセールの間の春と秋に売り上げの山を作るための企画として、「ゾゾウィーク」を開始した。内容はセールがメインだが、プレゼント企画やツイッター連動企画など、毎日来てもお客さまが飽きないように工夫している。これまでやってこなかったことを反省するくらい大きな反響をいただいている。
─新たな販促施策の狙いは。
これまではショップから在庫を預けていただき、クーポンを打ったり、セールで積極的に仕掛けて売り上げを伸ばしましょうという話が多くなっていたが、価格訴求も過渡期に入っているため、新たな施策を投入することでショップの選択肢を広げている。ショップも値引きやクーポンで利益を削ってでも売りたいというわけではない。手数を増やし、プロパーで売り切ったり、利益を確保しながら売り上げを伸ばしたりする方法を増やしていきたい。
─PB(プライベートブランド=自主企画)「ZOZO(ゾゾ)」の販売を本格化しているが、ショップにとってのメリットやデメリットは。
「ゾゾ」を開始したことで多くのお客さまが「ゾゾタウン」に来ていただいており、UU(ユニークユーザー)数も良い伸びをしている。「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」で計測した体型データを基にアイテムの絞り込みができる「あなたサイズ検索」という機能も提供しており、利便性が上がっているのは間違いない。
ショップから「『ゾゾ』の露出が増えたことでショップへの流入が減っているのではないか」と言われることもあるが、そういった事実はない。「ゾゾ」を求めて新規に来訪した多くのお客さまがブランドのアイテムを購入している。「ゾゾ」と出店ブランドが販売しているアイテムは特性が異なっている。ブランドのアイテムはファッション商材だが、「ゾゾ」は誰もが必要としているベーシックアイテムを提供するブランドを目指しており、生活商材に近いため、お客さまが使い分けしていると考えている。
■プロパー比率が上昇
─低価格帯のブランドが増え、「ゾゾタウン」自体に安売りのイメージが付いているのでは。
16~17年ごろに比較的低価格帯のネット専業ブランドの出店が増えたことで、そういった印象を持たれているのかもしれない。新規ユーザーも増えているため、顧客単価は下がりつつあるが、18年は下げ幅が緩やかになり、一つの潮目を迎えたと考えている。インフルエンサーが立ち上げたブランドや、韓国系でも中価格帯のブランドなど時流に乗ったブランドが18年に出店し、売り上げも順調に推移している。こうした影響もあり、プロパーの比率が少しずつ上がってきている。
─今後はどういったアイテムを増やしていく計画か。
ファッションアパレルが中心であることに変わりはないが、アイテムのバリエーションを増やそうと考えている。キッズやバッグ、シューズ、コスメ、雑貨、キッチンツール、インテリアなど周辺カテゴリーを取り込む。ファッション好きな方はカルチャーやスポーツも好きだったりするので、将来的には包括的に提供できるようにしたい。オシャレに生活をするためのアイテムは何でもそろう「ゾゾタウン」を目指していきたい。
【Eコマース業界地図 「ECモール&プラットフォーム編」】 〈インタビュー〉ZOZO 松田健EC事業本部ディレクター/新施策で客単価下落に歯止め
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