新型コロナウイルスの影響で、飲食店によるEC展開が活発化している中、外食チェーンのECが好調だ。ECを売り上げの柱とする計画を定めたり、通販事業部を新設するなど本格的な取り組みも目立つ。ラーメンの一蘭(本社福岡県)は、20年1―6月期(中間期)のEC売上高が前年同期比3倍に、太陽のトマト麺を展開するイートアンドホールディングス(本社東京都)は、ECサイト開設2カ月で300件以上の注文があった。実店舗を生かした施策が奏功している一方で、新規顧客の獲得が次の課題となっているようだ。
■一蘭は売上3倍に
とんこつラーメン専門店「一蘭」をチェーン展開する一蘭(本社福岡県、吉冨学社長)は、20年1―6月期におけるEC売上高が前年同期比3倍だった。新型コロナの影響も増収要因だが、店舗の売り上げを補完する施策が奏功したようだ。
一蘭は、4月にECサイトの改修を行った。多くの受発注に対応できるようになっただけでなく、サイトの拡張性や分析、メルマガの販促もできるようになった。メルマガ配信は6月から開始。ECへのコンバージョン率は、他のSNSと比べて高い結果になっているという。16年7月から提供している公式アプリの会員数は現在(10月6日時点)で約50万人。アプリからECサイトへの導線作りも、顧客獲得のポイントとしている。
情報発信ツールと捉えているインスタグラムでは、公式アカウントのほか、お土産商品専用のアカウントを昨年に新設している。公式の情報発信とは異なり、物販情報や顧客が一蘭の商品を利用しているシーンを紹介するなど、「家食」を意識した情報発信が購買を促している。
■イートアンドは出足好調
大阪王将や太陽のトマト麺をチェーン展開するイートアンドホールディングス(本社大阪府、文野直樹CEO)は20年8月、自社ECサイト「太陽のトマト麺オンラインショップ」を開設した。9月末までに注文数は300件を超え、好調な出足となっている。
ECサイトのトップページでは、トマト麺を使ったアレンジレシピを紹介している。トマト麺を武器に、「家食」の開拓を進め、トマト麺を食べたことのあるインフルエンサーなどに商品を提供し、口コミなどを通して認知を拡大させる取り組みも行っている。
食品のほか、ラーメン用の器の販売も計画している。同社ではこれまでも店舗に足繁く通ってくれた客を対象に、特別なラーメンの器を提供してきた。プレミアがつくこともあり、ファンが欲しがるアイテムになっていたという。
(続きは、「日本流通産業新聞」」10月22日号で)
〈外食チェーン〉 本格化するEC展開/売上高3倍の好調企業も
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