EC事業者の間でインスタグラムの運用代行の利用が拡大している。インスタグラムは、他のSNSよりも若年層の利用者が多く、現在のところは費用対効果が得やすいとされている。運用を専門会社に外部委託し、フォロワー数などで一定の成果を上げている事例も増えた。今春以降は、「巣ごもり需要」の高まりもあって売り上げを前年の2倍に伸長させた事業者もある。ただ、インスタグラムを使ったECサイトの販促が増えたことで、関連する消費者相談も増えている。
フェイスブック社によると、20年4―6月期(第2四半期)のおける世界のインスタグラムなどの月間利用者数は前年同期比15%増の31億4000万人で、ユーザーは今後も増えるとみる。顧客接点を作りたい事業者の利用も進むため、インスタグラムの運用代行も広がりそうだ。
■フォロワーをEC誘導
ワインのネット販売のトゥエンティーワンコミュニティ(本社東京都、守川敏社長)は19年10月から、インスタグラムの運用代行サービスの利用を始めた。フォロワーは1年で約7000人増えた。
外注サービスの導入後は、20~30代の女性を中心に顧客が増加したという。新型コロナウイルスによる「家飲み」の需要の高まりもあるが、インスタグラムを見ている人に商品やキャンペーンなどの情報を配信した効果も大きいとみる。20年8月期のEC売上高は前期比30%増の20億円超の見通しだ。
現在も定期的なプレゼント企画をインスタグラムで実施し、新規顧客の定着化を図っている。守川社長は、「プレゼントしたワインを味わってもらい、ECサイトのリピート購入につなげる」と話す。
和菓子の製造販売を手掛ける鼓月(本社京都府、中西英貴社長)は今年7月から運用代行サービスを利用している。2カ月で2000人以上の新規フォロワー数を獲得。特に20~30代の新規顧客をECサイトへ誘導したという。
「インスタ映え」する写真などを月に20回ほど投稿し、9月からはフォロワーを対象に、インスタライブの配信を開始。商品情報を発信することで、ECサイトの訪問者数は前年の1.5倍になった。これにより、今年7~8月のEC売り上げは前年同期間比で2倍に。9月度のEC売り上げも前年同月比20~30%増で推移している。
花園万頭(本社東京都、齋藤充社長)も、インスタグラムの運用代行サービスの利用でEC売り上げが伸びた。外注を始めた19年12月時点で20人だったフォロワーは現在までに7200人を超えている。主に30代の新規顧客が大幅に増えたという。
花園万頭の今年7~8月のEC売り上げは前年実績の2.2倍だった。
フルーツビネガーの販売を手掛けるオークスハート(本社東京都、内堀光康社長)がインスタグラムの運用代行サービスの利用を始めたのは今年3月。6月までにフォロワーは2000人増えた。
フォロワーの増加に合わせてプレゼント企画などを実施し、ECサイトに誘導した。「巣ごもり需要」も重なったことで、3~5月のEC売り上げは、前年同期間比約3倍になったという。
■インスタ利用は増加へ
EC向けにインスタグラムの運用代行サービスを手掛ける事業者も増えている。
(続きは、「日本ネット経済新聞」10月15日号で)
〈EC実施事業者〉 インスタ運用の外注が増加/フォロワー急増、売上倍増の例も
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