中国政府はこのほど、1月に施行した電子商取引法について、規定を確実に実行させることを目的としたガイドラインを公表、ECの監督管理を強化すると発表した。ガイドラインでは、19年6月から11月の間、違法サイトやアプリの取り締まりなど、ECの具体的な取り締まり方法を規定している。中国当局によるECの取り締まりが強化されることで、「タオバオなどの中国CtoC―EC市場が減速していく可能性がある」と予測する越境ECの支援事業者もいる。
日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、ガイドライン「2019年のインターネット市場の監督管理特別行動方案」は、中国政府の国家市場監督管理総局など8部門が6月17日に公表した。同ガイドラインでは、「中国電子商取引法が規定する『電子商務経営者』の市場主体登記の監督」「微商(ウィーチャット)などのアプリで商品を販売するEC事業者や越境EC業者に対する規律の強化」「『電子商プラットフォーム経営者』に出店事業者の情報の真実性を確認すること」などを事業者に求めている。
今後は同ガイドラインに基づき、政府の各部門がEC事業者の監督管理の強化を進めるとみられる。具体的には、郵便会社や宅配会社に対して、顧客であるEC企業への審査を強化するよう求めている。
天猫(T―モール)やタオバオなどの中国ECモールの市場調査を行っているNint(ニント、本社東京都)も、同ガイドラインによる直接的な影響はまだ見られないとしている。ただ、19年に入ってから、中国EC市場での日本商品のCtoCの流通規模は減少傾向にあるという。
ニントによると、18年度(18年4月―19年3月)のアリババの越境ECチャネル全体を見ると、CtoCモールである「タオバオ」の流通規模が、78%と高い。ただ、中国政府が、非正規流通の監督を行うことにより、CtoCの流通規模が減速する可能性があるとしている。
ニントでは、「日本メーカーが中国向けECで展開する場合、まずはバイヤー経由でCtoCで認知度を高めて、そこからモールなどに本格的に出店するケースが多い。今後は、CtoCのバイヤーが減少するため、日本メーカーが有力なバイヤーを新たに開拓していく必要がある」(吉野順子社長)と話している。
中国越境EC支援のunbot(アンボット、本社東京都)は、「バイヤーの参入障壁が高くなってインバウンドには引き続き悪影響がでるだろうが、正規の越境ECの需要は高まるのでは」(広報担当)と話している。
中国政府 〈EC取締まり強化を発表〉/C2C―EC減速を訴える声も
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