増える不正注文被害/中小ECや消耗品も標的に/対策にはかご落ちの懸念も

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む

 クレジットカードの不正使用による被害が拡大している。(一社)日本クレジット協会の調査では、16年度(16年4月~17年3月)のカード不正使用の被害総額は、前期比20%増の140億円だった。主な標的だった家電やブランド品のECサイトが対策を固めた結果、健康食品などの低額な消耗品にも被害が広がっている(=グラフ(1)参照)。EC企業の取れる対策は複数あるが、どれもコスト面の懸念や、かご落ちのリスクをはらんでいる。

■月間100万円の被害

 「多いときは月間100万円を超えるチャージバック(※)被害が出ていた」と、ある家電ECの大手企業は振り返る。「それまで担当者の目視で不審な注文を見分けていたが、エコポイントや地デジ移行の影響で注文が増え、目視では対応しきれなくなったことが原因だった」と話す。
 他人名義のカード情報を利用して商品を購入し、空き家などに送らせてだまし取る「カードの不正使用」は、単価が高い家電ECで被害が最も顕在化していた。本来のカードの持ち主が不正注文に気付くと、商品を販売したネットショップには商品の代金が支払われない。配送済みの商品は取り戻すこともできないため、ネットショップにとっては、商品価格や配送費などが損害になる。

■コストとリスクの板挟み

 ネットショップにとって、不正使用の対策は複数ある。中でもカード裏面に記載された「セキュリティコード」を入力させる方法はユーザーにとって最も簡単だ。ただ、セキュリティコードを含む個人情報が漏えいするケースも増えており、不正使用を100%防ぐ方法にはなっていない。
 「3Dセキュア(※)」を導入する方法もある。3Dセキュアを導入すると、不正使用が発生しても、被害額はカード会社から保障される。そのため、前出の家電ECの場合、「3Dセキュアを導入したところ、チャージバックによる被害額が現在ではゼロになった」と言う。
 ただ、ユーザーにとって煩雑な方法であり、かご落ちは当然増加する。「最近では、ユーザーも慣れてきたのか3Dセキュアによるかご落ちは減ってきたように感じる」という声も聞かれるが、それでも一定程度のかご落ちは覚悟せざるをえないだろう。
 不正検知サービスを提供する、かっこ(本社東京都)は、「最近では、不正が巧妙化してきており、事業者単独での対策は難しくなっている」(ソリューション事業本部セールス&マーケティンググループ)と不正使用防止対策の現状について話す。
 例えば、不正注文の内6割超は、言語設定が「中国語」のパソコンからだが、中国ドメインのメールを使った不正注文は全体の1.4%にすぎない(=グラフ(2)参照)。「中国ドメインではEC事業者のチェックが厳しいことを、不正利用者側も学んでいる」(同)のだと言う。
(続きは、「日本ネット経済新聞」11月9日号で)

 ※チャージバックとは…カードの不正使用が引き落とし後に発覚したとき、加盟店が購入者に対して行う返金のこと。
 ※3Dセキュアとは…決済時にカード番号・有効期限に加えてパスワードの入力を求める仕組み。パスワードはカード発行時に設定し、カードには記載しない。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ