健康食品の表示に対する消費者庁の執行が激しさを増している。今年3月には3件計5社に対して、景品表示法に基づく措置命令が出され業界に衝撃が走った。「女子力UPに、胸ふくらむ」「ボンヤリ・にごった感じに」「クリアでスッキリ」といった、暗示的な表現にも踏み込んで処分がなされたからだ。その背景について、識者は「健食の機能を表示したければ、機能性表示食品、栄養機能食品、特定保健用食品(トクホ)の制度を活用しろ、という考えが、消費者庁にあるのではないか」と分析する。ただ、〝受け皿〟と期待されている機能性表示食品制度は依然としてスムーズな運用がなされているとはいい難い。受け皿の整わない中での一方的な執行強化は、実質的な〝業界つぶし〟という批判が生じる可能性がある。
17年3月に消費者庁は、3件計5社の健食の表示について、景品表示法に基づく措置命令を行った。3件とも、業界に対して少なからぬインパクトを与える内容だった。
3月3日には、水素水や水素サプリを販売していたEC会社3社を一斉処分。3月9日には、アイケア健食を販売するだいにち堂が、同30日にはECサイトで豊胸サプリを販売するミーロードが、それぞれ処分を受けた。アイケアや豊胸のサプリメントが景表法の措置命令を受けたのは今回が初めてだ。
だいにち堂とミーロードの事例に共通するのは、消費者庁があいまいな暗示表現にまで踏み込んで処分を行っていることだ。薬事法広告研究所の稲留万希子代表は、今年3月のミーロードの処分について『女子力UPに、胸ふくらむ』というコピーに対して、『広告全体をみて判断した場合NG』という判断がなされた。『期待に胸が膨らむ』という意味ともとれる慣用表現すらNGなのかと衝撃を受けた」と驚きを隠せないようすだった。
だいにち堂のケースでは、「ボンヤリ・にごった感じに」「ようやく出会えたクリアでスッキリ」などのコピーが違反表示として例示された。稲留代表は「健食の広告に『クリア』や『スッキリ』というコピーは常套句。これもNGとするのは『厳しすぎる』と感じた」と言う。
訴求表示するには「表示制度活用しろ」?
もともと健康食品は、健康の維持増進などの機能を持つことが期待される食品だ。機能が期待される食品について機能をうたわずに販売せねばならないという矛盾した状況の中、業界は多くの暗示的な表現方法を考案し、消費者に対して商品選択に役立つ情報を提供してきたという経緯がある。今回の処分を機に、今後、暗示的な表現にも大きくメスが入るようになるとすれば、多くの消費者のニーズに基づいて拡大してきた健食業界にとって、致命的なダメージともなりかねない。
健食の広告規制に詳しい丸の内ソレイユ法律事務所の齋藤健一郎弁護士は、執行強化の背景に、機能性表示食品の存在があると指摘する。
(続きは、「日本ネット経済新聞」5月11日号で)
健康食品のネット表示/暗示表現にも規制強化の波/機能性表示、受け皿にならず
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