コロナ禍で急成長した腕時計EC市場。アフターコロナを迎えてからも、ロレックスをはじめとしたハイブランドや限定商品など、付加価値が高い高価格帯の腕時計の売れ行きは好調に推移してきた。ただ、ここにきて一転、国内市場には停滞感が漂うようになっている。こうした流れを受け、主戦場を海外に移そうとする腕時計事業者が増えてきている。円安の影響もあり、海外市場においては、日本国内の在庫に割安感が生じている。海外への腕時計販売は増加傾向にあるという。世界最大級の高級腕時計マーケットプレイス「Chrono(クロノ)24」では、直近1年間の、日本から出品された商品の販売数が、前年同期間比で34.1%増となったという。腕時計ECの国内売り上げが伸び悩んでいる今、今後は海外への販売が主流となっていきそうだ。
■日本の販売数が大幅増に
世界中に腕時計を販売するマーケットプレイス「クロノ24」では、円安の影響もあり、日本から出品された腕時計の販売数が群を抜いて伸びているという。直近1年間の販売数は、ドイツが前年同期間比3.6%減、米国は同3.8%減、英国は同16.8%減となった。前年同期間比2.0%増となったフランスや、同6.0%増となったアジアとの比較でも、日本の前年同期間比34.1%増というのは突出している。
出品数のランキングにおいても、23年は米国が1位だったが、24年9月末時点では、日本が1位となっているという。Chrono24 Japan(本社東京都)は「円安の影響もあり、海外の顧客にとって日本の在庫の価格は非常に魅力的に映ったとみえる」(コンテンツマーケティングリード・ルドゥクィスト祥子氏)と話す。
ロレックスなどの高級腕時計をECと実店舗で販売する羅針(本社東京都)でも、海外向けの販売が好調だという。
「円安に伴い、実店舗の輸出免税商品の売り上げが増加。数年前から強化を進めている越境ECの24年3―8月期(中間期)の売上高は、前年同期比で64.0%増になった」(取締役・田中拓郎氏)と話す。越境ECでは、米国からの購入が多いのだという。
■国内ECは停滞か
羅針の24年3―8月期の実店舗を含めた総売り上げは、インバウンド需要の増加もあり、同28%増となったという。一方で、越境ECの売り上げが伸びる中、EC売上高は、前年同期比で横ばいにとどまったという。「リユース市場全体を見渡せば、安定して成長を続けている。ブランド品、腕時計についても、同様に成長していくだろう。実店舗は、円安の影響もあり活況。新店の大阪心斎橋店も、在庫を増やし、安定して成長している」(田中氏)と話す。
今後はインバウンド需要の獲得と越境ECが業績伸長を図る上で鍵になっていきそうだ。
(続きは、「日本ネット経済新聞」10月24日号で)
【腕時計EC】 海外販売へのシフト進む/国内市場の停滞感背景に(2024年10月24日号)
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