変化の大きい海産物EC市場は、昨年と同じ戦略では勝ち抜けない。有力企業は社会情勢などの変化に対応し、柔軟な戦略を展開している。カニを販売する通販企業は今シーズン、仕入れ価格が落ち着いてきた「タラバガニ」や「本ズワイガニ」などの主力品種の仕入れと販売を強化している。一方、福島第1原発の処理水の問題で中国向けに輸出ができなくなったホタテなどを販売する通販企業は、企業とのコラボレーションを行って、国内向けの販売を促進する計画だ。
今年のカニの年末商戦は昨年と大きく異なる。昨年まで高騰していたカニの仕入れ価格が下落した。昨年はカニの消費大国である米国でカニの需要が拡大したり、産地であるロシア情勢が不安定になったりした影響で、カニの仕入れ価格が高騰していた。
昨年は日本人が好む「タラバガニ」や「本ズワイガニ」などの仕入れ価格が高騰したことを受け、安価な「南タラバガニ」や「ジョナクラブ」などの仕入れを強化する企業が目立った。
今年は米国の需要が落ち着いたことなどを受け、主力品種の仕入れ価格が落ち着いているという。
■ご褒美需要を実感
「楽天市場」などでカニを販売する増米商店や森源商店などは今年、「タラバガニ」や「本ズワイガニ」を確保し、販売を強化していく。
増米商店は昨年販売した「南タラバガニ」などの販売が想定よりも振るわなかったため、今期は仕入れ数を調整する。
「個人的な仮説だが、多くの日本人が年末に家族で食卓を囲むとき、1年のご褒美としてちょっと良いカニを食べたいのだと思う。安価な品種のカニは、思ったより販売数が伸びなかった。だが、若い家族層などには、販売価格が安い『南タラバガニ』などは需要があったとも感じている。そのため、今年は販売を止めるのではなく、調整していく方針だ」(増米商店・橘高友樹代表)と説明する。
(続きは、「日本ネット経済新聞」10月5日号で)
【変化に挑む海産物通販企業】 カニは主力品種に回帰/処理水問題で影響受けたホタテ拡販も(2023年10月5日号)
記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。